賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第40回 ボジュヌルド→ゴルガーン

 イラン北部のボジュヌルドでは「ツーリストイン」に泊まったが、翌朝は夜明けとともに起き、早朝の町を歩いた。

 目抜き通りを歩き、さらに町外れまで足を延ばした。

 前方にはエルブルーズ山脈の山々。目の前を黒衣の女性が歩いていく。その手には町中のナン屋で買ったナンを持っている。

 エルブルーズ山脈の山麓は豊かな農地で大豆畑が広がっている。家々のまわりには木々が見られる。イランというと荒涼とした風景の砂漠のイメージが強いが、この一帯はじつに緑の濃い世界だ。

 ボジュヌルドの町をひと歩きし、「ツーリストイン」に戻ると朝食。ナンにバター、チーズ、ハニーをつけて食べる。白いチーズは羊乳から作られている。イラン人はナンにハニーをつけて食べるのが大好き。飲み物は「チャイ」。ミルクなしの紅茶で砂糖を口に含んで飲む。それと紙パックのオレンジジュースがついていた。

 朝食を食べ終え、さー、出発だ。

 今日の目的地、ゴルガーンに向かって走り出す。この道はA1。

「アジアハイウエー」の一番の幹線だ。アフガニスタン国境からメシェッド、シルバン、ボジュヌルドと通り、ゴルガーンからカスピ海沿岸の町々を経由し、イラン西部の中心地タブリッツからトルコ国境へと通じている。

 トルコ国境からは「ヨーロッパハイウエー」のE80になる。

 A1はそんなイラン横断の「アジアハイウエー」の1号線だ。

 A1を走り出すと、何台ものバイクがエンジン音を響かせ、次々に接近してくる。我々のバイクに興味があり、我々を歓迎してくれているのだろうが、あまりにも接近してくるのでちょっと怖い。大半が若者。怖いもの知らずで、先行する車やトラックにはぴったりついて走っている。

 そんな若者たちの手荒な見送りを受けてボジュヌルドの町を離れていった。

 やがて平地から山地に入っていく。エルブルーズ山脈が北に大きく張り出した一帯。高さ2000メートル前後の山並みを縫っていく。

 山地を抜け出ると、今度はカスピ海沿岸の大平原に入っていく。左手にはエルブルーズ山脈の山並みがどこまでもつづいている。 平原にバイクを止め、ブルーシートを敷いての昼食。サンドイッチを食べているとエルブルーズ山脈の山々には突如、黒雲がかかり、ザーッと雨が降ってきた。久しぶりの雨…。キルギスの天山山脈以来の雨だ。

 A1沿いのアザドシャハル、アリアバッドと通り、16時30分、ゴルガーンに到着。ボジュヌルドから320キロ。ここでは「アジンホテル」に泊まった。

 時間がたっぷりあるので、さっそく町を歩く。

 町の中心、シャフルダーリー広場に近いバザールを歩き、テヘラン行きの列車の出るゴルガーン駅まで行った。近くにはバスターミナルがある。イランは長距離バスの国。テヘラン行きの列車は1日1便だが、テヘラン行きのバスは頻繁に出ている。ボジュヌルド、シルバンを経由し、メシェッドまで行くバスも出ている。

 日が暮れたところで「アジンホテル」に戻り、レストランで夕食。サフラン入りの白いライスにニジマスのフライ。カスピ海沿岸の一帯では稲作が盛んでライスがよく食べられる。

 この白いご飯を「チェロウ」といっている。そのほか「ポロウ」もよく食べられる。

 この「ポロウ」というのはピラフのこと。中国の新疆ウイグルなど、中央アジアで何度となく食べたピラフはトルコ、イランからシルクロード経由で東へと伝わった。

早朝のボジュヌルドの町を歩く

早朝のボジュヌルドの町を歩く

ボジュヌルドの町外れ。前方にはエルブルーズ山脈

ボジュヌルドの町外れ。前方にはエルブルーズ山脈

アザドシャハルまで165キロ

アザドシャハルまで165キロ

ライス&ニジマスの夕食

ライス&ニジマスの夕食