賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第45回 タブリーズ→ドーバヤジット

 2006年10月2日午前6時、起きるとすぐに、タブリーズの町を歩く。夜明けのすがすがしい空気を吸いながらの町歩きは気持ちいい。

タブリーズ・インターナショナル・ホテル」に戻ると朝食。ハニーとクリームを混ぜ、それをナンにつけて食べる。トロッとしたハニーとクリームの混ざり合った味がナンにマッチしている。チャイ(紅茶)を飲みながらのナン。いつものイランの朝食もこれが最後だ。

 8時に出発し、2車線の幹線道路でトルコ国境に向かう。

 この道はA1。トルコ国境からはヨーロッパハイウェーになるので、この区間はアジアハイウェーの最西端区間ということになる。

 さすがに欧亜を結ぶ幹線だけあって、トルコナンバーやヨーロッパの国々のナンバーをつけた大型トラックとひんぱんにすれ違う。

 タブリーズから130キロほどのエボグリーの町で給油したが、これがイラン国内での最後の給油。イランといえば世界でも、最もガソリンの安い国のひとつだが、国境を越えてトルコに入ると、今度は世界で一番(といっていいほど)ガソリンの高い国になる。

 そんな2つの国が隣りあっているのだ。

 この一帯はアゼルバイジャンアルメニア旧ソ連の2国とトルコとにはさまれた回廊地帯。エボグリーの町からアゼルバイジャンは近いし、北東に40キロほど行けばアルメニアになる。カスピ海に流れ出るアラス川がイランとそれら2国との国境になっている。エボグリーのガソリンスタンドで地図を見ていると、無性に国境を越えてコーカサスの国々をまわりたくなってくる。

 13時30分、国境の町、バザルガンに到着。タブリーズから280キロ。町から国境事務所までは延々と大型トラックの長い列ができていた。

 まずはイランの出国手続き。10何台ものバイクの手続きなので時間がかかる。

 つづいてトルコの入国手続き。すべてが終わったのは20時30分。7時間かかっての国境通過だ。その間は忍耐あるのみ。ただひたすらに待ちつづけた。

 いよいよトルコに入った。「シルクロード横断」の最後の国だ。

 国境の町、ギュルブラックからドーバヤジットへ。この道はE80。ヨーロッパハイウェーの80号線。世界が変わった。

 トルコ東部クルド人の町、ドーバヤジットに着いたのは22時。イランとは30分の時差があるので、トルコ時間では21時30分になる。トルコは10月末まで夏時間なので30分の時差だが、それが過ぎると、イランとの時差は1時間30分になる。

 町の中心の「ヌフホテル」に泊まり、町のロカタン(食堂)で遅い夕食を食べる。

 パンとスープ、それとライスつきのカバブー。国境を越えるとパンが変わった。イランのナンからトルコパンのエキメッキ(トルコ語でパンの意)へ。テーブルの上に置いてあるパンはいくらでもおかわりできる。スープにつけながら食べるトルコパンはうまい。 

 翌朝は「ヌフホテル」最上階のレストランで朝食を食べる。すばらしい眺望。ドーバヤジットの町並みの向こうには雪をかぶったアララト山(5165m)が見える。雪の白さがまぶしい。さらにその向こうには富士山型のきれいな山も見える。そんな絶景を眺めながらの朝食は最高の贅沢だ。ここには連泊するので、朝食を食べ終わると、さっそくドーバヤジットの町をプラプラ歩いた。

トルコ国境への道

トルコ国境への道

ドーバヤジットの夕食。ライス&カバブー

ドーバヤジットの夕食。ライス&カバブ

「ヌフホテル」のレストランからアララト山を眺める

「ヌフホテル」のレストランからアララト山を眺める

ドーバヤジットの町を歩く

ドーバヤジットの町を歩く