韓国食べ歩き:第9回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
「魚醤油圏」のなれずし
日本からインドシナへとつづく「魚醤油圏」でひとつ興味深いのは、このエリアでは、「なれずし」が作られ、食べられていることだ。
韓国ではシッケと呼んでいるが、いったん塩漬けにした魚介類を塩抜きし、それを米飯とかアワ飯に漬け込んで発酵させ、熟成させたものだ。
日本では海魚のみならず、イワナやアユ、フナといった川魚のなれずしをもつくっている。インドシナの山地でも同様に川魚のなれずしをつくっている。
なれずしは海洋民のつくりだしたものではなく、もともとは山地民が川魚の保存のためにつくり出したものだった。
場所によっては獣肉のなれずしもある。
このような山地民のなれずしと海洋民の魚醤油、塩辛が同じ食文化のゾーンに出てくることに、私は非常な興味をそそられるのである。
両者に共通しているのはともに発酵食品であるということ。
日本から東アジア、さらには東南アジアへとつづく「魚醤油圏」というのは、食品の発酵技術が世界の他地域に比べ、ひときわ発達しているエリアといえる。