韓国食べ歩き:第10回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
「サムゲッタン」を食らう!
南大門市場の屋台では、ブタの臓物のほかに、腸詰も食べた。
この腸詰というのは、ブタの腸に強飯とはるさめを詰めたもので、それにブタの血やトウガラシ粉、コショウ、ネギ、ニンニク、ショウガなどを混ぜてある。
それらを詰めた腸管の先端を糸をくくり、味噌味の汁の中で煮立てたもの。それを冷やし、臓物と同じように薄切りにし、トウガラシ粉の混ざった塩につけて食べるのである。 屋台では男も女も、ボリュームたっぷりの臓物や腸詰をぱくついている。間食に食べているのだろう。そのような光景を目にしながら、私はこの国に根づいている肉食の伝統を実感するのだった。
南大門市場近くの食堂で昼食にした。
ちょうど昼食の時間帯なので、店内は混んでいた。それとはなしにまわりの人たちを見ていると、五目飯のビビンバや雑炊のクッパ、冷麺のネンミョンといった単品の食事をしている人が多い。ネンミョンはソバ粉にコムギ粉を混ぜて打った麺に、冷たい牛肉のだし汁とムルキムチ(水キムチ)の汁をかけたものである。
私たちは夏負けしないようにと、名物料理の「サムゲッタン」を注文した。
夏によく食べられるサムゲッタンだが、内臓を取り出した若鶏の腹腔に糯米、ナツメ、薄切りのニンニク、スサムを詰め、薄い塩味で水炊きしたものである。土鍋に入った熱々のサムゲッタンに荒塩をパラパラッとふりかけて食べていると、汗がタラタラ流れ落ちてくる。
スサムというのは掘りたてのチョウセンニンジンのこと。サムゲッタンの汁にはチョウセンニンジンとニンニクのエキスが混ざり合い、溶け合っている。それだから食べ終わったあとは、急に元気が出るような、体の芯が火照るような気分を味わった。