賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第30回 イシククル湖→ビシュケク

 2006年9月16日、夜中に激しい雷雨が降った。朝、起きるとすぐにイシククル湖まで行くと、雨は上がり、雲の間から天山山脈が見えている。湖に突き出た桟橋で釣りをしている人がいる。パン&バター、チーズ、オートミールの朝食を食べ、9時、出発。イシククル湖の湖岸の道でバリクシーの町に戻っていく。

 その途中ではイシククル湖北側の天山山脈の支脈がよく見えた。天気が回復し、抜けるような青空をバックに、天山山脈の雪の白さがひときわ際立っていた。

 このイシククル湖北側の天山山脈の支脈はクーギョイ・アラト山脈、それに対してイシククル湖南側の天山山脈主脈はテレスキー・アラト山脈と呼ばれている。

「アラト」はキルギス語で「山脈」を意味する。クーギョイ・アラト山脈はキルギスカザフスタンの国境になっているが、山脈を越えたすぐ北がカザフスタン最大の都市、アルマティになる。

 シルクロードの中でもこのエリアは日本から一番遠いところだが、こうしてイシククル湖を眺め、天山山脈の山並みを眺めながバイクを走らせていると、シルクロードが実像となってとらえられるようになる。

 イシククル湖西端の町、バリクシーに戻ってきた。その東端にはカラコルの町があるが、2つの町を結んでぐるりとイシククル湖を一周できる道もある。「イスククル湖一周」は約400キロになるとのことだが、いつの日か、ぜひとも中央アジアの奥深くに位置するこの湖を一周してみたい。

 バリクシーからは首都ビシュケクに向かう。じきに天山山脈の山中に入っていくが、このあたりで天山山脈の2つの山並み、北のク-ギョイ・アラト山脈と南のテレスキー・アラト山脈は合体し、キルギス・アラト山脈となって西へと延びている。

 その山並みをブチ割るようにチュー川が深い谷をつくって流れている。ドーロン峠を越えてからは、ずっとこの川に沿って走ってきたが、そんなチュー川は天山山脈を抜け出ると、カザフスタンの大平原の中に消えてしまう。かなりの水量の川なのだが…。

 チュー川の谷間を走り、やがて風景が開けてくる。右手はカザフスタンへとつづく大平原が茫々と広がり、左手には天山山脈の山並みが際限なく連なっている。

 首都のビシュケク郊外のレストランで昼食。パンとサラダ、肉団子入りのスープ。スープには香辛料のウイキョーが入っている。中国では香菜だったが、キルギスに入りると、それがロシアと同じでウイキョーに変わる。それと「サモサ」。これはインドのものだ。インドのサモサが中央アジアに伝わり、定着している。食文化の伝播のダイナミックさを感じながら昼食を食べた。

 キルギスの首都ビシュケクに到着。我々の泊まった郊外の「エルドラドホテル」は中国系の新しいホテル。カジノもある。「メイド・イン・チャイナ」の物だけでなく、中国資本もこうしてどんどんと中央アジアに進出している。

 ビシュケクでは徹底的に歩いた。ポプラ並木を北へ、雪の天山山脈を間近に眺められるところまで歩いた。ビシュケクから眺める天山山脈も目の底に残るものだった。

夜明けのイシククル湖。雲の切れ間から天山山脈を眺める

夜明けのイシククル湖。雲の切れ間から天山山脈を眺める

雪の天山山脈。この山並みの向こうはカザフスタン

雪の天山山脈。この山並みの向こうはカザフスタン

雪の天山山脈。この山並みの向こうはカザフスタン

天山山脈の山中を行く

ビシュケクから眺める天山山脈の雪山

ビシュケクから眺める天山山脈の雪山