賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(37)鳥羽三島(三重)

(『ジパングツーリング』2002年1月号 所収)

 知多半島突端の師崎港では食堂でカレーライス&うどんの夕食を食べ、17時55分発の伊勢湾フェリーの最終便で鳥羽に渡る。人は1150円、バイクは1100円。スズキSMX50の料金は篠島や日間賀島よりも安かった。

 師崎港から鳥羽港までの70分の船旅はよかった。

 夕暮れの師崎港を出た船は最初は三河湾口を横断し、渥美半島突端の伊良湖岬に向かって進んだ。やがて方向を大きく変え、神島の近くを通り、伊勢湾口を横断したのだ。

 鳥羽港到着は19時05分。鳥羽からは坂手島、菅島、答志島の3島をまわるつもりでいたが、そのうち、鳥羽に一番近い坂手島に行く船はまだ動いていた。ラッキー!

 鳥羽市営船の出る佐田浜港から「第22鳥羽丸」で坂手島に渡る。人280円、バイク210円と、バイクの料金がぐっと安くなる。

 鳥羽から坂手島までは7分。すぐに島の民宿に電話すると、民宿「やまちょう」で泊まることができた。

 坂手島の道は人がすれ違いできる程度のもの。その狭い道の両側に家々がびっしりと建ち並んでいる。この狭い道をバイクで走るのは気がひけたので、SMX50を船着場において民宿「やまちょう」まで歩いていった。

 坂手島には車で走れるような道はない。それでもバイクと一緒に島に渡れたのは、すごくうれしいことだった。

 坂手島の民宿「やまちょう」で見た夜明けの風景はすばらしいものだ。

 目の前に横たわる菅島の最高峰、大山(237m)の右手に朝日が昇り、鳥羽の海はキラキラと光り輝く。

 民宿「やまちょう」のおばあちゃんは無理を聞いてくれ、6時過ぎには朝食をつくってくれた。ありがとう。そのおかげで7時10分発の鳥羽・佐田浜港行きの船に乗ることができた。

 鳥羽に戻ると、坂手島から眺めた菅島に渡る。

 漁港周辺の集落を通り抜け、大山中腹の森林地帯に入っていく。緑の濃い樹林が覆いかぶさっている山道。自然度満点だ。

 ローギアを使わなくてはならないような急坂を登り、森林地帯を抜け出る。すると、パーッと視界が開け、目の前の坂手島とその向こうの鳥羽を一望する。

 道路の行き止まり地点まで行ったときは、思わず「あー!」と声を上げた。そこは島とは思えないような大採石場。何十トンという巨大ダンプが走りまわっている。世界でも最大級の鉄山とか銅山を見ているような気にさせられた。今までに何度となく乗った「伊良湖―鳥羽」のフェリー航路のすぐわきに、このような世界があったとは・・・。

 漁港まで戻ると、今度は島の反対側の行き止まり地点まで行き、そこからは遊歩道を歩いてレンガ造りの菅島灯台を見た。

 菅島といえば、毎年7月11日におこなわれる海女の祭り、「しろごん祭り」は天下の奇祭として知られている。

 菅島から鳥羽に戻ると、最後に、鳥羽湾に浮かぶ島としては最大の答志島に渡った。鳥羽市営船の出るもうひとつの港、中ノ郷港から「第28鳥羽丸」の乗った。人480円、バイク280円とバイクの料金の安さが際立っている。答志島の和具港を経由し、終点の答志港で下船した。

 答志港周辺を歩いたが、答志島東端のこのあたりは風が強く、しっくいで塗り固めた屋根瓦も見られた。答志あたりは、鳥羽周辺でも海女の本場として知られている。女性はみなさん、全員といっていいくらいに海に潜る。ここからだと神島がはっきり見える。その向こうの伊良湖岬もよく見える。

 答志島には島一周の道はない。まずは島北端の行き止まり地点まで行き、答志港に戻ると、さきほど船が寄港した和具港へ。ここには関ガ原の戦いで破れた九鬼水軍の九鬼嘉隆の首塚や胴塚がある。またここには答志島温泉もある。

 和具からは島の西端の桃取へ。島横断の「答志スカイライン」と呼ばれている道を走る。漁港のある桃取から、「第27鳥羽丸」で鳥羽の佐田浜港に戻り、「鳥羽三島」をまわり終えた。