賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(38)紀伊大島(和歌山)

(『ジパングツーリング』2002年1月号 所収)

 鳥羽湾の「鳥羽三島」をまわり終えると、鳥羽から国道167号で志摩半島を南下していく。五知峠を越え、横山の展望台に寄り道し、英虞湾に浮かぶ島々を眺めた。

 そして国道167号の終点の賢島へ。長さ10メートルくらいの短い橋で渡るので、島という実感はしないが、賢島は英虞湾の島なのである。国道167号の終点にとどまらず、近鉄志摩線の終点にもなっている。賢島のもうひとつの橋、賢島大橋を渡ると、賢島が島だということがよくわかる。

 賢島から国道167号で阿児町の中心、鵜方まで戻り、そこから国道260号で国道の尽きる御座岬へとスズキSMX50を走らせる。

 その途中では、大王崎に立ち寄り、夕暮れの岬を歩いた。志摩町の中心、和具では国道沿いの店「奥しま」で、和具が発祥の地といわれる志摩の名物料理、「手こねずし」(900円)を食べた。マグロのように赤いカツオの切り身をつかった料理。もとはといえば漁師料理だった。

 夜道を走り、19時30分、御座に到着。国道はここで尽きる。20年前の「日本一周」のときには、対岸の浜島へ、国道フェリーが出ていた。

 御座岬に近い御座では民宿「一葉」に泊まり、翌日、阿児町の鵜方まで戻った。

 そこから西へ。浜島で再度、国道260号に合流し、熊野灘沿いの曲がりくねった道を走り、紀伊長島で国道42号に出る。

 尾鷲、熊野と通って三重県から和歌山県に入り、本州最南端の町、串本までやってきた。

 串本から目の前の紀伊大島にループ橋の「くしもと大橋」で渡り、大島東端の樫野崎まで行った。そこには「トルコ記念館」(入館料250円)。明治23年に樫野崎沖で遭難したトルコの軍艦「エルトグルル号」にまつわる資料を展示している。岬の先端には石造りの灯台としては日本最古の樫野崎灯台がある。明治3年の初点灯だ。

 夕日が対岸の串本に沈むころ大島港に行き、港近くの民宿「紀の島」で泊まった。

 夕食にはタイがまるごと1尾、活け造りで出た。そのほかカマスの焼き魚、ツブ貝、トビウオの子など、紀伊大島の海の幸を存分に味わった。

 翌日は紀伊大島から本州最南端の潮岬へ。「本州最南端」碑の前で記念撮影し、潮岬灯台に登り、潮御崎神社に参拝した。潮御崎神社は銅板葺きの立派な建物。堅固な石垣で囲まれている。

 串本から国道42号で和歌山へ。その途中、白浜温泉では無料湯の露天風呂「崎の湯」に入り、御坊からは日ノ岬まで行った。岬の展望台からは四国最東端の伊島がよく見えた。

 和歌山からは国道26号で大阪へ。その途中では田倉崎に立ち、沖に浮かぶ友ヶ島とその向こうに長々と連なる淡路島の山並みを見た。

 大阪では国道1号の終点、梅田新道の交差点をゴールにした。

 そこには鰐淵渉さん、藤原延興さん、林昭伸さんが出迎えにきてくれていた。みなさんに見送られ、国道1号の一気走りで東京に戻るのだった。