韓国食べ歩き:第3回
(『あるくみるきく』1987年 所収)
箸と匙
ソウル到着の翌朝は、早朝の市場を歩きまわり、朝食も市場内の食堂で食べた。
ご飯に味噌汁、キムチが3種、カボチャとタチウオの天ぷらというメニューだった。
ご飯と味噌汁はステンレス製の器に入っている。箸と匙もステンレス製。それらがセットになっている。
韓国語で「チョッカラ」という箸は、長さが20センチにも満たない短いもので、なおかつ細い。慣れない私には、指にしっくりこないので、使いにくくてしかたない。
もう一方の匙は「スッカラ」といわれる。匙面は楕円形で柄はまっすぐ。長さは箸とほぼ同じである。
箸と匙の使い方は、はっきりと分かれている。箸でおかずをつまみ、匙でご飯と汁をすくうのである。
まわりの人たちを見ていると、箸よりも、よりひんぱんに匙を使っている。この国における匙の重要性を見る思いがした。
さらに日本と違う点は、ご飯と汁は各人に配膳されるが、おかず類は大皿形式で、直箸で口まで運ぶ。取箸、取皿がないのである。
食べ方を見ていると、ご飯や汁の入った器を手で持ったり、直接、口をつけたりはしない。器は膳に置いたまま、匙ですくって食べるのである。
熱伝導率の高い金属器を用いてきた韓国の食習慣がこのような食べ方になったのか、もともとこのような食べ方だったので金属器が発達したのか…。そのあたりのことは何とも興味深く、「ぜひとも知りたい!」と思った。