日本列島岬めぐり:第8回 とどヶ崎(岩手)
(共同通信配信 1990年)
「みなさん、本州の最東端って、どこですか?」
と、クイズを出してみたくなるほど、本州最東端の岬は知られていない。
答えは重茂半島のとどヶ崎だ。
三陸海岸を貫く幹線の国道45号を北上し、カキやホタテの養殖が盛んな山田湾から入っていく重茂半島は、海に近いとは思えないほど山が深く険しい。まるで深山幽谷の地に足を踏み入れたかのようだ。
姉吉というバス停で半島一周道路を離れ、本州最東端の集落、姉吉を通って浜に出た。浜には昆布小屋が並んでいた。
ここからとどヶ崎までは、4キロほどの山道を歩いていく。
汗まみれになってたどり着いた東経142度04分35秒のとどヶ崎には、東北地方では一番のノッポ灯台、高さが34メートルの灯台が立っている。断崖上には「本州最東端」の碑。目の前には島影ひとつなく、太平洋が果てしなく広がっている。
往復8キロも歩かなくてはならないので、この岬までやってくる人はほとんどいない。断崖の縁に腰を下ろして自分一人でたたずみ、絶景岬を独占した。
岬から浜に戻ると、コンブ漁の漁師さんの話を聞いた。
9月に入ると、天然コンブの採取で忙しくなる。きれいな飴色をした三陸のコンブは質が良い。ととヶ崎の名前通り、かつては岬にトドがやってきた。しかし、最近ではトドを見かけなくなった。
姉吉の漁師さんからは、そんな話を聞いた。
コンブといい、トドといい、私はすでに北国の親潮の海に入ったことを強く感じた。植生を見ても、寒地性のナラなどの落葉樹が岬を覆っていた。