賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第7回 御崎(おさき・宮城)

 (共同通信配信 1990年)

 唐桑半島突端の御崎まで行く前に、日本でも有数の遠洋漁業の基地である気仙沼漁港に立ち寄った。

 港では遠洋マグロ漁船の完成祝いを見た。新造船は大漁旗を満艦飾にひるがえらせ、ボリュームをいっぱいに上げたスピーカーから大漁節を流しながら接岸した。船主のあいさつに続いて餅がまかれ、集まった人たちは争ってそれを拾った。

 気仙沼から陸中海岸国立公園の唐桑半島に入っていく。長さ20キロほどの半島で、カキ養殖の研究所やアワビとワカメ養殖の海底牧場があるほど、漁業の盛んなところ。

 半島の西岸には鮪立や小鯖などの漁港があり、遠洋漁船の乗り組み員の多くはこの地から出ている。

「マグロ御殿」の建ち並ぶ半島の中ほどには、大理石の海岸「巨釜・半造」がある。巨釜の高さ16メートル、幅3メートルのオベリスク状の白っぽい石柱はこの海岸のシンボルになっている。三陸大津波で先端が折れ、それ以来、折石といわれている。

 唐桑半島最南端の御崎には御崎神社が祭られ、そこから先は自然遊歩道になっている。うっそうと茂るタブやツバキなどの照葉樹林によって、岬突端への小道は昼でも暗い。

 黒潮の影響で、このあたりまで暖地性の照葉樹林が北に延びてきている。

 小道のわきには苔むした鯨塚があった。その昔は供養塔の塚が立つほどの鯨を捕ったのだろう。

 岬先端の灯台の先には、黒色粘板岩の岩場が幅30メートル、長さ100メートルにわたって海に突き出ている。「八艘曳」と呼ばれる岩場で、御崎神社の祭神が8艘の船を従えてこの岩に上陸したという。まさに「御崎」。

 御崎は磯釣のメッカでもある。八艘曳の岩場では多くの釣り人たちが釣り糸を垂れていた。