賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

中央分水嶺の峠・総論 (Central-Dividing Ridges in Japan: Introduction)

中央分水嶺の峠越え

 ぼくがバイクでの「峠越え」をはじめたのは1975年3月18日のこと。サハラ砂漠を縦断したスズキ・ハスラーTS250で奥武蔵(埼玉)の峠を越えた。

 

 記念すべき第1番目の峠は国道299号の高麗峠。気がつかないままに通りすぎてしまいそうな、ほんとうにゆるやかな峠だった。つづいて正丸峠を越えた。当時は正丸峠を貫くトンネルもないような時代で、曲がりくねった峠道を登りつめ、峠に到達したときはいいようのない感動をおぼえた。「奥武蔵の峠」ではそのあと山伏峠、小沢峠、天目指峠など全部で14峠を越えた。

 

「峠越え」をはじめたころは、数年もかければ、日本中の峠を越えられると思っていた。ところが南北に細長く、国土の大半が山地という日本列島にはそれこそ無数といっていいほどの峠があることがわかった。1975年以来、30数年の歳月をかけて北海道から沖縄まで細かくエリアに分けて「峠越え」をしてきたが、日本の全峠踏破にはほど遠いのが現状だ。2006年末の時点で越えた峠は1576峠になったが、まだまだ越え残した峠は多い。日本の全峠といったら、おそらく3000以上の数になることだろう。

 

 ところで日本の峠の中でも一番重要なのは北海道、本州、四国、九州の本土4島の中央分水嶺を越える峠だ。中央分水嶺は日本列島を太平洋側の日本海側に二分する分水嶺で、北海道最北端の宗谷岬から九州最南端の佐多岬まできれいな1本の線でつながっている。ぼくの越えた1576峠をあらためて整理し、中央分水嶺の峠だけをピックアップしてみたが、全部で440峠になった。もちろんこれで全部ということではないが、その大半は網羅している。さらに中央分水嶺支線の峠も全部で146峠(そのうち20峠は中央分水嶺の峠とダブル)を越えた。

 

 この中央分水嶺の支線というのは、次のようなものである。

 北海道だと最北端の宗谷岬から最南端の白神岬を結ぶ線が中央分水嶺になるが、宗谷岬から中央部の三国山までは日本海とオホーツク海を分けている。そこで三国山から知床岬までを太平洋とオホーツク海を分ける分水嶺を支線とした。もう1本、渡島半島の先端は松前半島と亀田半島に分かれているが、亀田半島の汐首岬への分水嶺もやはり支線にした。

 

 同じように本州では八甲田山から下北半島の大間崎までを支線にした。それと本州西部では江川が中国山地を突き破って南側から北側へ、日本海へと流れ出ている。これが中央分水嶺の線を非常にわかりにくくしている。しかし、それはおいて、江川によって突き破られた中国山地主脈をやはり支線にしている。

 

 西日本では中央分水嶺が2本の線になっているが、北の線が主で、南の線が従と理解してもらえばいい。北の線は日本海と瀬戸内海を分ける分水嶺で、南の線は太平洋と瀬戸内海を分ける分水嶺の線になっている。南の線で難しいのは大阪湾。大阪湾を瀬戸内海に含めない線を中央分水嶺とし、含める線を支線にした。

 

 ということで、いままでに中央分水嶺の峠と中央分水嶺支線の峠を合わせて566峠を越えたが、これからも中央分水嶺の峠にはおおいなる興味を持って越えていこうと思っている。

 

 そのようなカソリの思いを込めて、「中央分水嶺の峠・一覧」を北海道から九州へ、エリアごとに分けてあげてみよう。これにはまだ、自分の越えていない峠も含まれている。

(※「峠越え」データ編にリストが続きます)