賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

⑨「オーストラリア2周7万2000キロ」の「カレン」

 南のアデレードから北のダーウィンを目指して大陸を縦断したときのことだ。

 キャサリンではバックパッカーズ、「クックバラロッジ」に泊まった。ここは男女同室のバックパッカーズなのだが、なんと8人用の部屋に女の子が4人、男はぼくだけというまるで花園状態。大陸縦断の“一気走り地獄”のあとの”花園天国”といったところなのだ。

 オーストラリア人の女の子2人、ドイツ人の女の子1人、イギリス人の女の子1人の花園に入ると、若い女性特有の匂いが部屋中に満ち満ちていて、頭がクラクラッとしてしまった。

 この4人のうち、イギリス人女性とはダーウィンで会ったことがある。

 毎週水曜日におこなわれる「ビクトリア・ホテル」のフリーバーベキュー(ただでバーベキューが食べられる)で一緒の列に並んだのだことがあるのだ。ぼくのすぐ後が彼女だった。なにしろプロポーション抜群なので、目に焼きつくほどに、しっかりと彼女をおぼえていた。

 旅での出会いというのは、そんなちょっとしたきっかけでも、「やー、あのときの」で、すぐに仲良くなれるもの。

 彼女の名前はカレン。20歳。マンチェスターの女子大生で、大学を1年間、休学して旅に出た。オーストラリアをバスでまわっている。このあと、東海岸のブリスベーンからニュージーランドに飛ぶという。

 食事を終えると、オーストラリア産ワインを飲みながら話をした。彼女は毎日、日記をつけているが、その日記帳に、彼女の名前の「カレン・ウッドハウス」をカタカナで書いてあげると、すごく喜んだ。

 11時近くなったところで、「おやすみ」といって、ぼくが先に寝る。すでに部屋の電気は消え、ほかの3人の女のコたちはスヤスヤと寝息をたてている。ぼくは2段ベッドの上段で寝た。

 しばらくするとカレンが部屋に入ってきた。彼女のベッドは狭い通路をはさんだ下段。なんとカレンはその通路で着替えるのだ。着ているものを全部脱ぎ、パンツをはきかえる。薄明かりのなかで、その一部始終がまる見え。彼女はパンツの上にパープルの薄地のランジェリーを着ると、ベッドに横になった。

 彼女のズッシリと重そうな胸のふくらみが目の底にこびりつき、寝ようとしても、目がさえてなかなか寝つけない。眠くて眠くてどうしようもなかった一気走りのときとは、えらい違いだ。

 翌朝は、ぼくが一番最初に起きた。目がはれぼったい。

「クックバラロッジ」はすごくいいのだが、各ドミトリーごとにシャワールームとキッチンがついている。

 シャワーを浴び、キッチンでコーヒーを沸かしていると、カレンが起きてきた。なんとカレンは、パンツとランジェリー、そのまんまの格好で朝食の準備をはじめるではないか。パープルのランジェリーは薄地のものなので、光の当たる角度によっては、透けて乳房ははっきりと見えるし、乳首まで見えてしまう。また、ランジェリーはミニなので、すこし前かがみになるだけで、チラッチラッと白いパンツが見えてしまう。

「おい、おい、カレンよ、キ、キミは、ぼくを誘惑しようとしているのかい?」

 そんな下着姿のカレンと握手して別れ、「クックバラロッジ」の花園を出発。北へ、ダーウィンへと向かったのだ。