賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第41回 高茂岬(こうも岬・愛媛)

(共同通信配信 1990年)

 宇和海沿岸を貫く国道56号から高茂岬のある船越半島に入っていく。

 岬への途中の浦々はどこも養殖漁業が盛んだ。入江ではハマチやタイ、フグなどの養殖用生簀で埋め尽くされている。「海の畑」といった光景を眺めながら、スズキ・ハスラーTS50を走らせた。

 外泊の石垣集落の見事な石垣を見たあと、船越半島西端の高茂岬へ。

 高さ100メートル以上の断崖絶壁に囲まれた高茂岬は寂しいところで、岬周辺には人家も人影もない。岬の先端に立つと、豊後水道の向こうに、九州最東端の鶴御崎が霞んで見えた。ここは絶好の夕日のポイントだとのことで、宇和海に落ちていくきれいな夕日が見られるという。

 高茂岬からの帰路は船越半島の反対側を通った。

 海辺のあちこちに設置されたサーチライトに明かりが入り、入江の生簀を照らしはじめた。妖しいほどにきれいな眺めだ。

「魚って、光を当てると、成長が早くなるのかなあ…。それとも夜間に水揚げするためなのだろうか…」

 と、そんなことを考えながら店で出会った地元の人に聞いてみると、

「防犯のためだよ」

 といわれた。

 盗難防止の照明で、夜間も監視しつづけるという。たいへんな電力と労力を費やしての防犯とは…。

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断崖が海に落ちる高茂岬