賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第34回 平久保崎(ひらくぼざき・沖縄)

 (共同通信配信 1990年)

 那覇からフェリー「飛竜3」で18時間かけて渡った石垣島の石垣は八重山諸島の中心地。石垣港に上陸すると、50ccバイクを走らせ、日本最南の国道390号で石垣島最北端の平久保崎に向かった。

 太平洋に流れ出る宮良川の河口まで来ると、河岸はヒルギ林の濃い緑で彩られている。ヒルギの類などを総称してマングローブといっているが、日本では西表島が有名だ。

 しかし石垣島にも、吹通川や北部の小河川の河口などにはマングローブが群落を成している。 無数の気根を水中に伸ばしたマングローブ林の風景は日本離れしたもので、赤道直下のアフリカ・インド洋岸や熱帯アジアの海岸を思い起こさせた。

 国道390号をさらに北へ。サトウキビ畑が広がっている。それと牧場が目につく。牛、馬のほかに水牛を見かけるところがいかにも石垣島らしい。

 石垣から北に38キロの伊原間で、日本最南の国道は尽きる。その先は県道で、細長い平久保半島に入っていく。半島の一番狭まったところが船越(ふなくやー)という地名。太平洋と東シナ海の両方の海が眺められる。幅が300メートルほどしかない地狭で、地名通り、昔はくり舟を担いで渡ったという。

 石垣島最北の集落、平野には、「南の北の家」というユーモラスな名前の民宿があった。それ式の言い方をすると、平久保崎は「南の北の岬」ということになる。

 石垣島最北端の平久保崎に立った。白い灯台のある岬周辺は牧場になっている。断崖上に腰を下し、亜熱帯樹の緑で縁どりされた長い砂浜を見下ろした。

 海底が透けて見える。ライトブルーの海は海底が砂地で、モスグリーンの海はサンゴだという。人影のまったくない岬からの風景は心に残るものだった。