賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第25回 経ヶ岬(きょうがみさき・京都)

 (共同通信配信 1990年)

 丹後半島最北端の経ヶ岬には半島付け根の町、宮津から向かった。

 50ccバイクの特典を生かし、スズキ・ハスラーTS50で日本三景のひとつ、天橋立の中を走っていく。天橋立は上から見下ろせば、

「なるほど!」

 とうなずけるのだが、その中を走っていると普通の松林の小道と変わりない。

 ただ、左右に海を眺め、とくに左手の阿蘇海は夕焼けに染まって見事だった。

 国道178号を北上して伊根町に入り、若狭湾のブリ漁の定置網で有名な伊根漁港を通り過ぎると、「伊根温泉」の看板が目に入ったので寄り道した。

 町営の温泉センターには泉質の異なる湯船や打たせ湯、寝湯、露天風呂などがあり、温泉気分を満喫。湯量も豊富だ。

 経ヶ岬の途中では宇良神社にも立ち寄った。伊根町は浦島太郎伝説の地。この神社には浦島太郎が乙姫からもらったという玉手箱や乙姫のものだという小袖などが宝物として残され、浦島神社ともいわれている。

 伊根町から丹後町に入ると、じきに経ヶ岬である。駐車場にバイクを停めて、岬への山道を歩いた。

 経ヶ岬は第三紀の安山岩から成っている。

 周囲は高さ数十メートルの海食崖。名前の由来は安山岩の柱状節理が巻きかけの経巻に見えるからだとか、岬の東側にある海心洞に文殊菩薩像と万巻経を納めたからだといわれている。

 ここは昔も今も海の難所。対馬海流などの潮流が激しく、流れが複雑なため、難破する船が後をたたない。大汗をかいて岬の突端まで行き、明治31年初点灯という灯台まで行き、そこから魔の海を見下ろした。しかしこの日の日本海は穏やかで、波ひとつなかった。