賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道をゆく(4)「越前海岸編」ガイド

 (『ツーリングGO!GO!』2004年9月号 所収)

1、越前玉川温泉

越前岬にも近く、越前海岸探訪の拠点には最適だ。1965年に湧出した比較的、新しい温泉で、秋田県の玉川温泉と区別するために温泉名に越前をつけている。アルカリ性単純泉の湯は肌がスベスベになる。

越前玉川温泉は「越前ガニ」の本場、越前漁港にも近い。R305沿いには越前ガニが水揚げされる小樟漁港、大樟漁港などがあるが、それらを総称して「越前漁港」といっている。カニの季節に泊まると、湯上がりの食膳では狂喜乱舞の「越前ガニ三昧」を味わえる。

国民宿舎「まるいち玉川荘」でのカニのフルコースつきの宿泊は超おすすめ。高台に建つ温泉宿で、全室から日本海が望める絶好のロケーション。

2、越前岬

丹生山地の山々が海に落ち込んだところが若狭湾の東端の越前岬。越前加賀海岸国定公園の中心的な存在だ。

海岸段丘上には越前岬灯台。12月から2月にかけては岬周辺の山肌では自生のスイセンが咲く。断崖が海に落ちる岬の突端は岩のゴツゴツした海食崖。この越前岬は「越前ガニ」漁の漁船にとっては絶好の目印になっている。

越前港を出た漁船は岬の沖まで北上し、そこから西へと進路を変える。岬の北側には鳥糞岩や呼鳥門の奇岩。とくに風蝕作用によってできた天然のトンネルの呼鳥門は、越前海岸を代表する豪快な風景。ここで見る日本海に沈む夕日はすばらしいの一言。夕日に染まった若狭湾西端の経ヶ岬もはるか遠くに見える。

3、東尋坊

九頭竜川河口の北側に、輝石安山岩の柱状節理の断崖がストンと海に落ちている。それが東尋坊。高さは約25メートル。とくに冬、北西の季節風が吹きつけているときがいい。

鉛色の日本海は荒れ、大波が東尋坊に押し寄せる。北陸でも有数の観光地で、その入口には土産物店が並ぶ。海産物がメイン。越前名物の魚の糠漬け、ヘシコが目につく。イワシやサバ、コウナゴ、イカなどのヘシコだ。

九頭竜川河口の三国港は福井県内でも有数の港だが、その昔は日本海航路の北前船の寄港する港だった。三国の郷土資料館には北前船の「三国丸」の模型が展示され、当時の三国港の繁栄ぶりを描いた絵が掲げられている。東尋坊はそんな三国港を護る天然の防波堤になっている。

4、河野海岸道路

敦賀湾・若狭湾岸の有料道路。R8の大比田(敦賀市)の交差点から入っていく。別名「しおかぜライン」。その名のとおりの快適なシーサイドラインだ。料金が高いこともあって交通量は極少。そのためよけいに気分よく走れる。

左手に広がる越前の海がきれいだ。対岸は敦賀半島。敦賀半島突端の立石岬を過ぎると、青く霞んだ丹後半島を遠くに見るようになる。越前海岸の海岸線を走るR305とのT字の交差点(河野村)が終点になる。バイクの料金は620円(原付90円)。

5、敦賀の気比

敦賀の敦賀湾に面した一帯が「気比」。ここには北陸の総鎮守であり、越前の一の宮の気比神宮がある。敦賀港近くには市立博物館。ここでは敦賀の大陸と結びついた歴史を見ることができる。

敦賀港の西側、敦賀湾を望む砂浜一帯の松原は「日本三大松原」の気比の松原。東西1・2キロの松原には全部で1万7000本ものアカマツ。市民の絶好の憩いの場で、夏は海水浴場として賑わう。古代にはこの地で大陸からの使者を迎えた。

松原内には松原神社やこの地で処刑された武田耕雲斉ら「天狗党」の水戸浪士の墓がある。「ニシン倉」も保存されている。北前船で敦賀港に運ばれた蝦夷産ニシンを保管する倉で、敦賀のニシンが京都に運ばれた。