賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

海道をゆく(6)「丹後半島編」ガイド

 (『ツーリングGO!GO!』2004年9月号 所収)

12、天橋立

松島、厳島とならぶ「日本三景」のひとつ。若狭湾奥の宮津湾と阿蘇海を分ける全長3272mの砂州。砂州には7000本以上もの松がある。天橋立内の道は125cc以下のバイクならば走行可。

天の橋立は海辺から見ると、単に松林の緑の線でしかないが、北端の傘松公園の展望台や南端のビューランドの展望台から見下ろすと、「う~ん」と思わずうなってしまう光景。ということで天橋立は上から見よう。展望台で「股のぞき」をしてみよう。

傘末公園にはリフトとケーブルカーで、ビューランドにはリフトとモノレールで行ける。天橋立の南側には文殊堂(臨済宗智恩寺)、北側には丹後の一宮の籠神社がある。

13、籠神社

天橋立の北端にある籠神社は丹後の一の宮。この地が丹後の府中で、近くには丹後の国分寺跡もある。この地は元伊勢とも呼ばれ、籠神社は伊勢神宮の元宮になる。

古代の日本では太平洋側よりも日本海側のほうがはるかに先進地帯だった。とくに丹後は大陸との結びつきが強く、大陸の先進文化がこの地にもたらされた。元伊勢が丹後なのもその証明。

天橋立は籠神社の参道のようなもの。籠神社裏山の傘松公園展望台は天橋立を見る絶好のポイントだ。その奥には西国巡礼33番札所のうちの28番札所、成相寺がある。

14、普甲峠

丹後の中心、宮津から南に行く県道9号は「京街道」ともいわれる。北近畿タンゴ鉄道と京都縦貫自動車道と併走して南下すると、標高407mの普甲峠を越える。

峠からは丹後の山々を望む。峠の西側の山並みは「酒呑童子」の大江山へとつづいている。峠を下ると大江町に入る。大江山の登山口には「酒呑童子の里」。そこには「日本の鬼の交流博物館」があり、巨大な鬼瓦が入口に飾られている。

さらに下ると「元伊勢の里」。そこには元伊勢神宮奥宮の天の岩戸神社や内宮の皇大神社、下宮の豊受神社がある。五十鈴川も流れている。伊勢神宮は元々はこの地にあったものが、各地を変遷して今の地に移ったという。

15、伊根港

丹後半島東端の天然の良港。伊根湾奥の漁港沿いには230軒もの「舟屋」。1階が舟揚場、2階が民家になっている。1階はまさに伊根の漁民たちの生活の場で、舟のガレージになっているだけでなく、ここでは漁の準備をしたり、漁具の手入れをしたり、魚を干したりする。

「舟屋の里公園」からは舟屋群がよく見える。伊根湾めぐりの観光船も出ている。伊根といえば、関西圏では一番のブリの本場。「伊根ブリ」と呼ばれるほど。伊根湾に入ってくるブリを定置網でとっている。伊根港の北、R178からわずかに入ったところには「浦島太郎伝説」の「浦島神社」。神社に隣りあって「浦島館」がある。

16、経ヶ岬

丹後半島北端の岬。近畿地方最北端の岬であり、若狭湾西端の岬でもある。経ヶ岬は大きな境目で、この岬から西に行くと丹後半島も海が変わり、日本海になる。

R178近くの駐車場から岬の突端まで歩いていける。徒歩約20分。そこには白亜の灯台。丹後半島東側の海岸線を一望する。はるか遠くには若狭湾東端の越前岬を見ることもできる。大きな山がストンと海に落ちたような地形の経ヶ岬は、高さ数十メートルの海食崖に囲まれている。

安山岩の柱状節理が経巻に見えるのでその名があるという。沖合は昔も今も海の難所。対馬海流の潮流が激しく、複雑な流れになっているので、難破する船が後を絶たない。