日本列島岬めぐり:第12回 恵山岬(えさんみさき・北海道)
(共同通信配信 1990年)
北海道・亀田半島東端にそびえる恵山は標高618メートル。ツンと尖った特徴のある山だ。二重式の活火山で、白い噴煙をたなびかせている。5月、6月ともなると、ツツジの花が全山を埋め尽くす。そんな恵山の周辺には温泉が何湯もある。
恵山が太平洋に落ち込んだところが恵山岬で、津軽海峡の東口になる。海岸段丘の岬の突端に立つ高さ19メートルの白い灯台は、津軽海峡を航行する船舶、室蘭港に出入りする船舶の重要な目標になっている。
恵山岬までは函館から国道278号で行った。浜はどこもコンブ漁で忙しかった。国道から分岐した海沿いの道は御崎の漁港で行き止まりになるが、そこでは御崎海浜温泉の露天風呂に入った。
このあと、恵山の反対側にまわりこみ、椴法華漁港から行き止まり地点へ。恵山岬の灯台を見、その前にある灯台資料館の「灯台博物館」を見学。初代恵山岬の灯台の4分の1大の模型が展示されている。
海岸段丘の台地上から海岸に下ったところには水無海浜温泉の露天風呂がある。無料湯の混浴風呂では、東京から来たカップルのライダーと一緒になった。若い女性の方は水着を着ての入浴。彼女の恥ずかしげな仕草がかわいらしい。
名古屋からやってきたライダーとも一緒になる。彼は北海道ツーリングでは、どうしてもこの湯に入りたかったという。
「敦賀からフェリーで32時間かかって小樽に着いたとき、稚内に行こうか、恵山岬に行こうか、ずいぶんと迷ったけど、あー、やっぱりこっちに来てよかった!」。
彼のその言葉には実感がこもっていた。
みなさんと一緒に湯につかり、目の前に広がる太平洋の水平線を眺めた。