韓国食べ歩き:第25回
(『あるくみるきく』1987年1月号 所収)
光州の料亭料理
あっというまに、光州(クワンジュ)を離れる日がやってきた。
わずか4日の滞在であったが、名残おしい、忘れがたい光州だ。
私たちはすっかりお世話になった徐さんを招き、光州最後の食事をすこし奮発して料亭料理にした。
料亭といっても、格式ばった、堅苦しいところではない。日本でいえば、小料理屋風の料亭といったところだろうか。
私たちは部屋に通されたが、料理が出てくるまでには時間がかかる。
1時間以上、待たされただろうか。
隣の部屋の韓国人たちはその間、博打に精を出している。
私たちはプロボクシングの世界タイトルマッチをテレビで見た。ベネズエラ人の世界チャンピオンに対して韓国人の挑戦者が果敢な打ち合いをのぞんだが、挑戦者は打ちのめされてしまう。だが打たれても、打たれても、倒れなかった。噴出す鮮血で顔面を真っ赤に染めながらも、最後まで踏ん張りつづけた。
やっと料理が出た。
いったん出始めると、次から次へと出てくる。膳はあっというまに料理の皿で埋めつくされてしまう。壮観な眺めだ。
調味料、香辛料の皿も含めれば、皿数は30以上になった。とてもではないが、食べきれる量ではない。私たちは3人がかりでがんばったが、半分近くは残してしまった。