賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第21回 倫台→塔中

 天山山脈南麓の町、倫台で「天山南路」の国道314号を離れ、「タクラマカン砂漠縦断路」の「砂漠公路」に向かっていく。いよいよ「タクラマカン砂漠縦断」の開始だ。

 その入口には「塔里木(タリム)沙漠公路」のゲートがあり、「砂漠公路」完成の記念碑が建っている。我ら「シルクロード軍団」はその碑の前にバイクを停め、全員で記念撮影。これから入っていくタクラマカン砂漠への思いをあらたにした。

 タクラマカン砂漠はタリム盆地の大半を占める大砂漠。タリム盆地は東西が1500キロ、南北が600キロの楕円形をした大盆地。北に天山山脈、南の崑崙山脈の山々が連なり、西側は「世界の屋根」のパミール高原。盆地の北側をタリム川が流れ、灌漑により、オアシス周辺では綿花や小麦、トウモロコシなどがつくられている。

「さあ、出発だ!」

 スズキDR-Z400Sのアクセルを開き、エンジン音も高らかに「砂漠公路」のゲートをくぐり抜けていく。胸が踊る。胸が高鳴る。

「タクラマカンだ!」と、DR400に乗りながら叫んでやった。

 タクラマカン砂漠の中に2車線のハイウエーが延びる。タクラマカン砂漠の石油開発を一番の目的として、中国が総力を挙げて1990年代の前半に完成させた「砂漠公路」。

 倫台から86キロ走ると、塔河の町に着く。ここが最後の町だ。ここで給油し、塔河から2キロほど走ると、川幅いっぱいに滔々と流れるタリム川を渡る。豊かな水量。タリム川は世界でも最大級の内陸河川で全長2179キロ。カラコルム山脈から流れてくるヤルカンド川、崑崙山脈から流れてくるホータン川、パミール高原から流れてくるカシュガル川、天山山脈から流れてくるアクス川が天山山脈南麓のアクスの近くで合流してタリム川になる。4本の大河が合流してタリム川になった地点が一番、水量が多い。

 我々、日本人の感覚で「川」というと、源流から上流、中流、下流と流れ下るにつれて川幅は広くなり、水量が多くなり、最後は河口で海に流れ出ていくというものだ。

 ところがこのタリム川はまったく逆。流れ下るにつれてどんどん先細りし、最後は砂漠の中に消えていく。

 1994年の「タクラマカン砂漠一周」の「チャリクリク→コルラ」間ではタクラマカン砂漠に消えていくタリム川の最後を見た。

 タリム川を渡ると、一望千里の大砂漠がはてしなく広がる。砂砂漠が大半で、大砂丘群がつづく。その中にひと筋の舗装路が延々と延びている。小休止のときにはバイクを路肩に停め、歩いて砂丘に登り、砂丘のてっぺんから際限なくつづく大砂丘群を眺めた。

「中国はすごい国だ!」と思わせたのは、この大砂漠を懸命になって緑化しようとしていることだ。「砂漠公路」沿いに点々と管理人の家をつくり、そこを拠点に、「砂漠公路」沿いを緑化しようとしている。

 まだ十分に明るい20時ちょうどに、タクラマカン砂漠のど真ん中にある塔中に着いた。倫台から348キロ。ここには簡易宿泊所があり、食堂があり、ガソリンスタンドもある。

 西部開拓の最前線を思わせるような塔中。タクラマカン砂漠に日が沈む。それとともに大きな月が昇った。今日は満月。夕食を食べおえると、小島さんや菊池さん、石井さんらと満月に照らされたタクラマカン砂漠の砂丘を歩いた。まさに「月の砂漠」だった。

「タクラマカン砂漠縦断路」
「タクラマカン砂漠縦断路」

「砂漠公路」の記念碑前で
「砂漠公路」の記念碑前で

タリム河を渡る!
タリム河を渡る!

タクラマカン砂漠の砂丘に立つ!
タクラマカン砂漠の砂丘に立つ!