賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第20回 コルラ→倫台

コルラMAP

 天山山脈南麓のコルラの夜明け。

 トイレ、シャワーをすませると、さっそく夜明けの町を歩く。さわやかな朝の空気。歩道も車道もきれいに掃ききよめられ、ゴミひとつ落ちていない。鉄道はカシュガルまで通じているが、列車の汽笛が聞こえてくる。

 1時間ほど朝の町を歩いたところで朝食。レストランでのバイキング。まずは朝粥を食べる。中国人は朝粥が大好きだし、ぼくにとっても朝粥は大好物。沖縄の「豆腐よう」とまったく同じ紅色の発酵させた豆腐をのせて、黒米と雑穀の朝粥を食べた。

 日本人ももっと朝粥(日本のホテルや宿でも最近は朝粥を出すようになっているが)を食べるといい。朝粥を食べると、体の調子がすごくよくなる。

 そのあとで何種もの料理を皿にとり、白飯で食べた。

 9時、出発。天山山脈南麓を貫く国道314号を行く。右手には天山山脈の山並みが連なり、左手にはタクラマカン砂漠が茫々と広がっている。国道沿いには点々と石油関連の施設が見られる。コルラはタクラマカン砂漠の石油開発の拠点にもなっている。風が強く、砂がアスファルトの上を流れていく。

 コルラから170キロ走った倫台(ロンタイ)の町で昼食。調理場で麺づくりを見せてもらう。ここでは拌麺(パンメン)を食べる。ウイグル語では「ラグメン」になる。

 スープなしの麺で、スパゲティー風に、上に具をのせて食べる。それに対して新疆では汁の中に入った麺を拉麺(ラ-メン)といっている。拌麺も拉麺も、ともに手延べの麺だが、中国も西になればなるほど汁なし麺の拌麺がより一般的になる。この流れがヨーロッパのスパゲティーへとつづいていく。

 繰り返しになるが、シルクロードはまさに「麺ロード」。「麺」に興味を持っている人は多いと思うが、まずはシルクロードを横断して麺を食べ歩いてみたらいい。シルクロードは麺を見る、麺を食べる、麺を知るのには絶好のフィールドだ。

 倫台は我々の「シルクロード横断ルート」では、きわめて重要なポイントになる。

 ここで国道314号を離れ、タクラマカン砂漠縦断の「砂漠公路」に入っていくのだ。「天山南路」の国道314号は天山山脈南麓のオアシス、クチャ、アクスを通って中国西端のカシュガルに通じている。我々は倫台で砂漠公路に入ってタクラマカン砂漠を縦断し、ニヤの近くで崑崙山脈北麓の「西域南道」に出、そこからホータン、ヤルカンドと通ってカシュガルに向かっていくのだ。

「タクラマカン砂漠縦断」を前にして、ぼくは感慨無量だった。1994年の「タクラマカン砂漠一周」では、ほんとうは世界初、バイクでの「タクラマカン砂漠縦断」を目指したのだ。

 天山山脈南麓のアクスを出発点にし、崑崙山脈から流れてくるホータン川沿いのルートをたどり、崑崙山脈北麓のホータンをゴールにする予定だった。

 ところが崑崙山脈に降った記録的な大雨でホータン川が氾濫し、何百キロも下流のアクス周辺の湿地帯が一面の水びたしになり、結局、ホータン川沿いのルートに入っていけずに「タクラマカン砂漠縦断」を断念。「タクラマカン砂漠一周」のルートに変更したいきさつがある。

 それだけに今回の「倫台→ニヤ(中国語名は民豊)」の「タクラマカン砂漠縦断」は、ぼくにとっては12年ぶりの夢の実現ということになる。「倫台→ニヤ」の「タクラマカン砂漠縦断」ルートは、世界でもアフリカのサハラ砂漠に次ぐ世界第2位の大砂漠、タクラマカン砂漠のど真ん中を貫くルート。そんな「タクラマカン砂漠縦断」を前にして胸が高鳴った。

コルラの中心街
コルラの中心街

正面には天山山脈の山並み。右がコルラ、左がアクス
正面には天山山脈の山並み。右がコルラ、左がアクス

国道314号で小休止。DR-Z400Sに乗って喜ぶ地元の人
国道314号で小休止。DR-Z400Sに乗って喜ぶ地元の人

倫台の食堂での麺づくり
倫台の食堂での麺づくり