六大陸食紀行:第15回 オーストラリア
(共同通信配信 1998年~1999年)
オーストラリアは大陸を2周した。全行程7万キロ2000キロ。地球2周分ぐらいの距離を走ったことになる。
オーストラリア人はアメリカ人と同じように、ハンバーガーが大好きだ。うまいハンバーガーを食べようと思ったらチェーン店ではない店の、ホームメイドのハンバーガーを食べることである。
そこでは手づくりの、焼き立てのハンバーグをはさんでくれるし、焦げ目のちょっとついたパンの味もいいし、さすがにオーストラリアの国民食と思わせるものがある。
オーストラリアらしいのはビッグ・ハンバーガーの“ハンバーガー・ウイズ・ア・ロット”だ。文字通り、いろいろなものの入ったハンバーガーで、ベーコンやチーズ、目玉焼き、パイナップル、トマト、レタス、タマネギ、ビートなどがはさまっている。値段は日本のラーメン1杯分くらいで、これひとつで十分に満腹感を味わえる。
このビッグ・ハンバーガーは厚さが十数センチにもなるぶ厚いもの。最初のうちは具をポロポロこぼしていたが、そのうちに慣れ、こぼさずに食べられるようになった。
オーストラリアは“オージー・ビーフ”の国だけあって肉、とくに牛肉は安い。日本だったらグラム単位で買うところを肉食民のオーストラリア人は、キロ単位で買っていく。なにしろ肉が安いので、レストランでもごくふつうにステーキを食べられる。
おもしろいことに、肉の値段に違いはあっても、フィレステーキもTボーンステーキもラムステーキも、レストランで食べるステーキの値段にはそれほどの違いはない。300グラムから400グラムぐらいのステーキにジャガイモを細長く切って油で揚げたポテトチップスとサラダがついて10ドル(約800円)ほど。日本でいえば食堂で定食を食べるようなものである。
1人当たりの肉消費量が世界一という“肉食文化”の国オーストラリアで、私は3日に1度はTボーンステーキを食べるのだった。
今回を最後に、15回の連載で述べてきた六大陸の食べあるきというのは、きれいに色分けされた世界の食文化圏を見てまわる旅でもあった。
(この項、終わり)