賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

六大陸食紀行:第3回 西アフリカ・熱帯雨林地帯

 (共同通信配信:1998年~1999年)

 北の地中海から南のギニア湾を目指してのサハラ縦断でおもしろいのは、砂漠を抜け出て南下すると、どんどん緑が増え、サバンナから熱帯雨林へと鮮やかにかわっていく風景を見られることだ。

 サバンナでは雑穀を主食にしているが、熱帯雨林になるとタロイモ(サトイモの類)やヤムイモ(ヤマイモの類)、キャッサバといったイモ類、それとプランタインが主食になっている。プランタインは料理用のバナナで青いうちに食べるが、その食べ方というのはイモ類と変わらない。(なお、これら4種の作物の中では、南米原産で16世紀にアフリカに伝わったキャッサバを一番多くつくっている)

 サバンナの村々では1年に1度収穫する雑穀を貯蔵するための穀物倉を必ず見るが、熱帯雨林になると、穀物倉を見ることはまずない。畑に行けばいつでもイモ類が収穫できる熱帯雨林は、畑自体が食料庫といった世界なのだ。

 プランタインを含めたイモ類の食べ方だが、包丁で皮を削りとり、鍋でゆで、木臼に入れ、竪杵で搗いて餅状のものにする。その餅状のものをフーフーと呼んでいる。ここでひとつ興味深いのは、イモ類を鍋で煮るだけで食べられるのに、さらに臼で搗いて餅状のフーフーにすることだ。

 各家、各人の好みのフーフーがあり、キャッサバだけのフーフーだったり、タロイモやヤムイモ、プランタインだけだったり、またはブレンドしたり、そのブレンドも混ぜる種類や割合を微妙に変えたり。私の好みでいえば、一番ねばり気の強いヤムイモのフーフーが好きだ。また、プランタインを加えると、若干、甘味が出てくる。

 さてこのフーフーの食べ方だが、出来上がったフーフーを洗面器型をした器に入れ、別の器にこの地方特産のヤシ油で味つけした汁を入れ、2つの器をみんなで囲んで食べる。これは雑穀を主食とするサバンナの食べ方とまったく同じ。私はフーフーを食べながら、これがアフリカの食文化なのだと感動してしまう。