賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

六大陸食紀行:第2回 西アフリカ・サバンナ地帯

 (共同通信配信:1998年~1999年)

 西アフリカのサハラ砂漠以南のサバンナ地帯では、雑穀を栽培し、それを主食にしている。私が行ったのは乾期の11月で雑穀の収穫が終わる頃。バイクで走り過ぎていく村々では、収穫した雑穀の穂を穀物倉に入れたり、脱穀作業で忙しそうにしていた。

 泊めてもらった村で雑穀の脱穀作業を見せてもらった。

 幼稚園の運動場ぐらいの大きさの、きれいに掃き清められた広場に雑穀の穂を広げ、一日、乾かす。夜は牛などの家畜に喰い荒らされないように男たちが寝ずの番をした。

 翌日20人くらいの男たちが集まり、枝つきの木を切る。彼らは枝の方を手に持って一列に並び、その木の棒で雑穀の穂をたたき、穂から実を落としていく。「稗搗き節」のような胸にしみる唄を歌いながらの脱穀作業だった。

 そのあとは女たちの出番で、穂から落とした実を箒ではいて集め、器に入れ、頭の高さぐらいから下に落とす。風の力で殻やゴミは飛び散り、重い雑穀の粒だけが真下に落ちる。こうしてより分けられた雑穀の粒は、雑穀の穂の入っている穀物倉とはまた別な穀物倉に入れられた。

 この雑穀が彼らの主食になる。木臼と竪杵を使って粉にし、沸騰した鍋に入れて煮固め、餅状にする。それを器に入れ、別の器に汁を入れ、2つの器を囲んで食べるのだ。食べ方は手づかみ。餅状のものをつかみ、手の中で丸め、親指でへこみをつくり、汁をすくうようにして食べる。

 汁には木の実からとった脂や塩、乾燥させたオクラを木臼で搗いて粉にしたもの、南京豆を木臼で搗き、さらに石臼で磨って味噌状にしたものなどが入っていた。

 彼らの食事を見て、ひとつ感心させられたことがある。

 大人は腹8分目ぐらいになったところで食事の席を立つことだ。残ったものは育ちざかりの若者たちが食べる。それは年間を通しての食料の確保につながり、健康にもよいし、世代間のコミュニケーションもとれるしと、きわめて合理的な食べ方といえる。