「南米・アンデス縦断」(26)
標高4312メートルのラヤ峠ではバイクを止めて昼食にする。我々はすでに4000メートル台の世界には慣れているので、それほどの息苦しいさは感じない。パンとチーズ、ハム、それとパイナップルジュースという簡単なものだが、アンデスの4000メートル級の峠で食べていると思うと、ひと味もふた味も違う、何とも味わい深い昼食になった。
ラヤ峠からはすぐ近くにアンデスの雪山を見る。峠をクスコとプーノを結ぶ鉄道が通っている。
我々がラヤ峠で昼食を食べている間に、日本人のツーリングライダーが通りかかった。カワサキのKLR650での南米ツーリング。我々は止まってくれた日本人ライダーとしばらく話し、手を振って見送った。
ラヤ峠を出発。峠を下っていくと、平坦な高原地帯が広がっている。そこでは放牧されているアルパカの群れを見る。
ラヤ峠を下った高原地帯は、「南米一周」(1984年~1985年)での、忘れられない思い出の地なのだ。
今回と同じようにクスコからラヤ峠を越えたが、峠を下ったところには、アルパカを放牧している牧童の家があった。
すでに日が暮れかかっていたので、DR250Sを止め、
「ひと晩、泊めて下さい」
と頼んだ。
すると突然にやってきた異邦人にもかかわらず、快く泊めてもらい、牧童の一家(夫婦と3人の子供)には大歓迎された。
牧童の顔は凍傷にやられて痛々しい。口びるも黒紫色になっている。アルパカの群を引き連れて、寒風をついてラヤ峠の周辺をまわるからだ。
峠を吹き抜けていく風は、それほどまでに冷たい。バイクで走っているとよくわかるのだが、まるで刃物でほほの肉をそぎ落されるかのような痛みを感じるほどだ。
夕食には、ぼくのためにアルパカのぶ厚いステーキを焼いてくれた。羊肉に似た味。夜は土間にアルパカの毛皮を敷いてくれた。その上にシュラフ敷いて寝た。
夜半からはチラチラと雪の降るような寒さだったが、ポカポカと暖かいアルパカの毛皮のおかげで、薄っぺらなシュラッフでも汗ばむほど。まったく寒さを感じることなく、グッスリと眠ることができた。
そんな牧童の家で過ごした一夜が、なつかしく思い出されるのだった。
ラヤ峠からフーリアの町を通り、チチカカ湖へ。標高3810メートルのチチカカ湖は世界最高所の大湖だ。湖畔のプーノの町の「タイピカラ・ホテル」に泊まり、夕食はホテル近くのレストランで、チチカカ湖産の淡水魚料理を食べた。
標高4312メートルのラヤ峠
ラヤ峠から見るアンデスの雪山
ラヤ峠のアルパカ
夕食のチチカカ湖の魚料理