賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(50)

 7月15日5時起床。蒲庭温泉「蒲庭館」の朝湯に入り、朝食を食べ、7時30分に出発。スズキの650ccバイク、V-ストロームを走らせ、相馬市の中心、中村の町並みに入っていく。

 中村は相馬氏の城下町。明治維新後は原町(現南相馬市)に押されっぱなしで、その状況は現在もつづいている。中村と原町の対抗意識は相当なもの。この対抗意識が「相馬野馬追」をひときわ盛り上げているのかもしれない。

 中村の中村城址にある中村神社を参拝。これで小高の小高神社、原町の太田神社、中村の中村神社と、相馬野馬追の3社、すべてをめぐったことになる。相馬地方の一大イベント、相馬野馬追は毎年7月28日からの3日間、3社合同でおこなわれる。それに合わせて相馬には、またやって来るつもりだ。

 中村から県道38号で松川浦へ。松川浦といえば松をのせた小島が点在する潟湖で浜通り屈指の観光地だった。ここで海鮮料理を食べるのは浜通りツーリングの定番のようなもの。そんな松川浦も大津波の甚大な被害を受けた。

 大震災2ヵ月後に松川浦に入ったときは、あまりの惨状に目を覆った。漁船が陸に乗り上げて散乱していた。足の踏み場もないようなすさまじさで、陸上に散乱した漁船を撤去するだけでも大変なことのように思われた。

 しかし松川浦の復興は早かった。行くたびに乗り上げ船の数は減り、今ではもう1隻も見られない。瓦礫もすっかり撤去され、新しい家々が建ちはじめている。営業を再開した旅館や食堂を何軒も見る。「がんばっぺ、松川浦!」を合言葉に、松川浦のみなさんが一丸となって復興に立ち向かっている様子が伝わってくる。

 松川浦からさらに県道38号で浜通り最北の新地へ。大津波に襲われた海沿いの町並みは全滅。現在、瓦礫はすでにきれいに取り除かれているが、家々の土台だけが残った町跡に夏草が生い茂っている。それは胸に突き刺さ刺さってくるような光景だ。

 県道38号をさらに北上すると落下した橋で行止まりになる。宮城県境が目の前。ここで折り返し、国道6号で宮城県に入った。

IMG_0738_small_20130429214457.jpg

蒲庭温泉「蒲庭館」の朝食

IMG_0745_small_20130429214458.jpg

相馬の町

IMG_0755_small.jpg

中村神社を参拝

IMG_0761_small.jpg

松川浦の漁港

IMG_0767_small_20130429214456.jpg

夏草が茂る新地の町跡

IMG_0775_small.jpg

国道6号で宮城県に入る