賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(44)

 岩手県から青森県に入ると、国道45号から海沿いの県道1号を行く。

 JR八戸線の線路を渡ったが、すぐ近くの階上駅から八戸駅までは列車が動いている。太平洋岸では久々に見る運行中の鉄道。ピカピカに光っている線路が新鮮に見えた。

 県道1号沿いでは海岸スレスレに建っている家々が無事だ。集落もまったく無傷のように見える。風光明媚な種差海岸を北上。葦毛崎の展望台に立ち、蕪島(陸地とつながっている)へ。蕪島周辺は津波にやられているが、大きな被害というほどではない。ウミネコに占領されている蕪島神社を参拝し、そのまま県道1号で八戸の中心街に入っていった。

 八戸も大津波に見舞われ、臨海工業地帯に大きな被害が出たが、県道1号沿いではまったく津波の被害は見られない。八戸はいつも通りの活況を見せている。海鮮市場もにぎわっている。東北・太平洋岸の北の拠点、八戸はそれほど大きな被害を受けなかったので、東北復興の大きな力になっている。

 八戸の中心街で国道45号に合流し、国道45号→国道338号で下北半島に向かっていく。

 下北半島入口の三沢では国道を右折し、三沢漁港に行った。ここでも7メートルの大津波に襲われたとのことで漁業施設には大きな被害が出ていたが、海岸からかなり離れている三沢の市街地は無事。三沢を過ぎると、大津波による被害はほとんど見られなくなる。

 三沢を過ぎると天気は急変した。

 空は鉛色に変わり、そのうち雪が降り出す。雪はあっというまに激しさを増し、猛烈な西風が吹きはじめ、吹雪になった。V-ストロームがフワーッと舞い上がりそうになるほどの風の強さ。走るどころか、吹き飛ばされないようにするので精一杯だった。

 ラムサール条約の登録地にもなっている仏沼まで行ったところで尻屋崎を断念。何とも悔しいことだが、この地点を最後に東京に戻ることにした。尻屋崎まであと100キロ。ゴーゴーと吹き付ける吹雪の中で立ち尽くし、3月の東北の自然の厳しさをあらためてかみしめた。

 三沢まで戻ると、「三陸温泉」(入浴料250円)の湯に入り、湯から上がると休憩室で昼食。koshiさんからの差し入れの魚肉ソーセージやチーかま、ぴり辛ちくわ、温泉卵を食べた。これは朝、「グリンピア三陸みやこ」を出ようとすると、V-ストロームのハンドルに掛けられたビニール袋に入っていたもの。手紙と先日の写真も添えられていた。最後にカンコーヒーと「リポビタンD」を飲み、出発。カンコーヒーもリポDもkoshiさんの差し入れだ。koshiさん、ありがとう!

 三沢から八戸に戻ると雪は止み、何事もなかったかのように青空が広がり、日が差していた…。

 15時20分、八戸北ICで八戸道に入った。この時点では八戸道→東北道で一気に東京まで走るつもりでいた。

 ところが3月の東北はそれほど甘くはなかった。軽米ICを過ぎた頃から雪が降りはじめ、九戸ICを過ぎるとかなり激しい雪になった。路面はあっというまに白くなる。恐怖の雪の高速道路。

「これはもうダメだ…」

 と路肩に出、ハザードランプを点滅させて走った。

 次の一戸ICで高速を降り、国道4号を南下。雪は一段と激しさを増す。

 とにかく転倒しないように走ったが、ここでの最大の難所は国道4号最高地点の十三本木峠(中山峠)。この十三本木峠を決死の覚悟で越えた。我ながらよく越えられたと思うほどの雪の峠越えだった。

 沼宮内、渋民と通り、盛岡市内に入るともう大雪の様相。国道4号は真っ白だ。

 からくも盛岡駅前に到着。駅前の「東横イン」に飛び込みで泊まれたときは、「助かったー!」と心の中で叫んだ。無事にここまで来られて、ほんとうによかった。

 雪が激しく降っているので、夕食は盛岡駅前の地下街で。盛岡に来たからにはと、「寿々花」という店で「盛岡冷麺」(900円)を食べた。

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三沢漁港

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雪が降ってくる

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猛烈な風が吹いている

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三陸温泉での昼食

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八戸北ICから八戸道に入る

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盛岡駅前の「寿々苑」

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「寿々苑」の「盛岡冷麺