賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(43)

 翌朝は夜明けとともに起き、朝湯に入った。朝食は古山夫妻と一緒に食べた。

 ひと晩中降った雪は明け方には止んでいて、まずはひと安心といったところだ。

 朝食を食べ終わったところで古山夫妻と別れ、8時、「グリンピア三陸みやこ」を出発。ありがたいことに青空が広がっている。

 スズキV-ストロームを走らせ、国道45号へ。この間の雪は心配したほどでもなかった。ところが国道45号を北上するにつれて路面の雪はあっというまに多くなった。

 下り坂が恐怖。速度を落として走り、ツルンツルンのアイスバーンでは足を着きながら走った。

 岩泉町の小本を通り、田野畑村に入っていく。

 いよいよ最大の難関、国道45号の最高所にもなっている閉伊坂峠に挑戦だ。

 長い登りがつづく。雪との大格闘の連続。気温は0度近いのだが、暑くて暑くて汗が噴き出るほど。峠の頂上に到達したときは思わず「ヤッタ!」のガッツポーズ。

 しかし峠道の下りは、登りよりもさらに大変だ。たえずバックミラーで後続車を確認しながら走った。後続車がやって来るといったん路肩に避け、車の流れが途切れたところでふたたび峠道を下った。

 ありがたいことに閉伊坂峠を下ると雪は消えた。

 普代村、野田村と国道45号の路面に雪はなかった。

 普代村では海岸地帯を走った。

 漁港は巨大な防潮堤に守られ、その内側の民家にまったく被害は出ていない。防潮堤や水門が破壊されたり、大津波が防潮堤を乗り越えたりして大きな被害の出た現場を各地で見てきたので、ここではホッと救われるような思いがした。

 とはいっても、ここでも相当な高さまで津波が押し寄せている。漁港近くの川沿いの山肌には、津波の駆け上った痕跡がはっきりと残され、20メートルぐらいの高さまで樹木はなぎ倒されていた。

 国道45号沿いの普代村の中心、普代の町では津波の被害は見られなかった。

 野田村は大きな被害を受けた。

 海岸の堤防は破壊され、海岸から離れている町並みのかなりの家が倒壊、260人もの犠牲者を出した。ここでは押し寄せる津波よりも、引き波によってさらわれたという。何もかも、すべてを海に持っていかれたほどの引き波の強さだという。そんな中にあって国道45号沿いの道の駅「のだ」は無事だった。

 野田からは海沿いの県道268号を行く。野田村から久慈市に入り、小袖海岸へ。ここは日本最北の海女漁の地。海女センターがあったが、津波で流されたのか、浜からは消えていた。

 小袖海岸のきれいな海岸線を行く。狭路のカーブ、トンネルが連続するので対向車が怖い。断崖が海に落ち込む海岸線を抜け出ると久慈の町。久慈には30メートル超の大津波が押し寄せたが、人的被害は死者・行方不明者6名。これは奇跡的な数字といっていい。

 久慈の国道45号にも雪はなかった。

 久慈から国道45号を北上し、岩手県から青森県に入った。

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「グリンピア三陸みやこ」から見る朝日

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「グリンピア三陸みやこ」の朝食

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野田村の中心街

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「頑張ろう野田村!」

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久慈漁港