「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(42)
気仙沼から国道45号を北上し、宮城県から岩手県に入る。この日の目的地は大船渡。陸前高田を通り、9時、大船渡のバイク店「オートランドリッキー」に到着。国道45号と国道107号の交差点に店はある。
「スズキきずなキャリイキャラバン」の活動が始まった。
店内で奥様の入れてくれたコーヒーを飲みながら、三条社長の話を聞いた。
ここは新しい店で、元の店は大津波で流された。三条社長はそれに屈することもなく、すぐさま、この新しい店を立ち上げた。お客さんの所有していた土地と建物を借り受け、それを新店舗にしたのだ。
今回の大津波のような非常時では「絆」がすべてといってもいい。人と人とのつながりがいかに大きいかを教えてくれるような話。人は人に助けられて生きていくものだということを三条社長に教えられた。
何ともうれしいことに、震災1年を前にして三条社長は借りていた土地と店舗をすべて買い取り、名実ともに自分の店にしたというのだ。隣接した土地には何年か後にはビルを建て、立派なショールームにしたいと熱をこめて話してくれた。
大津波にも全く負けていない三条社長の強さ、奥様との二人三脚にも心を打たれた。
大船渡からもカソリ、大阪モーターサイクルショー会場のスズキブースMCの原智美さんに携帯で電話し、大船渡の状況や「オートランドリッキー」の様子などを話し、三条社長にも登場してもらった。スズキ二輪のMさんがデジカメで撮った写真が会場のスクリーンに映し出されるようになっている。
三条社長には昼時、盛駅に近い「ニュー香園」という中華料理店に連れていってもらい、「炒飯セット」をご馳走になった。その後、車で大船渡の町をぐるりとまわって案内してもらった。大船渡にも仮設の商店街や屋台村が誕生していた。
「スズキきずなキャリイキャラバン」は被災者のみなさんを支援するバイクやスクーターの無料点検だけでなく、スズキの電動スクーター「イ-レッツ」の試乗会をも兼ねている。それにはなんと神奈川県からやってきた古山夫妻が来てくれた。
古山夫妻は日本のみならず海外もバイクで走っているが、今回は車での東北旅。2人は震災後、東北各地でのボランティア活動に参加するだけでなく、こうして2人で東北各地を旅している。
前夜は大船渡の碁石海岸に泊まったとのことで、カソリが「オートランドリッキー」にいるという情報をキャッチして駆けつけてくれたのだ。
さっそくイ-レッツを試乗した2人だが、
「新しい世界をのぞいたような気分!」
とその印象を話してくれた。
ぼくは夜は田老の「グリーンピア三陸みやこ」に泊まるつもりにしていたが、古山夫妻もそれに合わせて「グリーンピア三陸みやこ」に泊まるという。
15時30分、「スズキきずなキャリイキャラバン」の活動終了。
「オートランドリッキー」の三条社長夫妻、スズキ二輪のMさん、「スズキきずなキャリイキャラバン」のチームのみなさんと握手をかわして別れ、大船渡を離れた。3日間、同行させてもらったので、スズキのみなさんとの別れには胸がジーンとしてしまった。
V-ストロームを走らせ、大船渡から国道45号を北上する。
釜石、大槌、山田を通り、夕暮れの宮古に着いた。
宮古を過ぎるとまたしても雪…。やはり宮古を境にして天気が変った。
宮古を過ぎると、より自然の厳しい北東北に入っていくという感じだ。
雪は前回ほどの降り方でなかったので助かったが、ヒヤヒヤドキドキのナイトラン。速度をギリギリまで落とし、絶えず後続車をバックミラーで確認しながら走った。
「グリーンピア三陸みやこ」に到着したときは心底、救われるような思いがした。
さっそく大浴場の湯につかり、湯船では思いっきり体を伸ばした。寒さでギュッと縮んでいた血管が一気に開き、血液が音をたてて全身を駆けまわっていくのがよくわかった。それにしても3月の東北は寒い。とくに北東北は…。ここではまだ真冬同然の寒さだ。
湯から上がる頃、古山夫妻も「グリーンピア三陸みやこ」に到着。一緒に夕食を食べ、そのあとは飲み会になった。
ビールを飲みながら2人の東北旅を聞いた。
2人とも今は東北旅に夢中。奥さんの里美さんは『ツーリングマップル東北』命!といったような人で、片時も離さない。
『ツーリングマップル東北』の話題で大盛り上がりしたあとは、「鉄ちゃん」の古山旦那の鉄道の話になる。鉄道の専門用語がボンボン飛び出し、「鉄道旅」も大好きなカソリなのだが、もうついていくので精一杯。夫の隆行さんの鉄道への知識は相当なものだ。
8669、大船渡を貫く国道45号
8670、国道45号沿いの「オートランドリッキー」
8672、盛駅近くの「ニュー香園」
8673、「ニュー香園」の「炒飯セット」
8675、大船渡の「屋台村」