賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(7)

「鵜ノ子岬→尻屋崎」の東北太平洋岸ツーリングは出だしから大きなピンチを迎えた。

「国道6号が走れれば、何ということもないのに…」

 と、改めて爆発事故を起こした東電福島第1原発に、ムラムラッと胸にこみあげてくる怒りを感じた。

 東電福島第1原発の爆発事故によって福島県太平洋岸の「浜通り」は完全に分断され、メチャクチャにされてしまった。このように「東日本大震災」から1年たったというのに、浜通りの南から北に行くのはいまだに大変なことなのだ。

 さー、怒っていても仕方ない。

 とりあえずは来た道を戻り、いわき市の四倉まで戻った。

 四倉の海岸にV-ストロームを止めて、しばし太平洋を眺めた。

 気分が落ち着くと、『ツーリングマップル東北』を見ながらのプランニング。その結果、「男は度胸だ!」と、高速道路に賭けることにした。というのは前日の大雪で磐越道の小野ICから先はチェーン規制がかかっていたからだ。

「北に行くのには、もうそれしかない」と心に決めた。あとは「なるようになれ!」だ。いままでも、いつも、そうしてきたではないかと自分で自分にいい聞かせる。

 いわき四倉ICで常磐道に入った。

 いわき中央ICまでは2車線の対面通行区間。この間に雪はまったくなかった。

 いわき中央ICを過ぎたいわきJCTから磐越道に入った。ここから東北道の郡山JCTまでは全線が4車線。東北道に出られるかどうかが、大きな問題だ。

 磐越道を走りはじめる。最初のうちはまったく雪がない。高速性能抜群のV-ストロームなので、存分にその走りの良さを楽しんだ。

 いわき三和ICを過ぎたあたりから雪景色になってくる。幸い天気は回復し、日が差してくる。路面に雪はない。大量の凍結防止剤がまかれているのでアイスバーン区間もない。それでも速度を落とし、突然、現れるかもしてないアイスバーンに最大限の注意を払った。

 いよいよ小野ICに近づいてくる。V-ストロームのハンドルを握りながら胸がドキドキしてくる。この先チェーン規制がかかっていたら、高速を降り、下道の国道348号で行くしかないのだが、阿武隈山地の雪の峠を越えられるとは思えなかった。

「ラッキー!」

 磐越道の小野ICから先のチェーン規制は解除されていた。さらに郡山JCTまでの間も路面に雪はなく、アイスバーンもなかった。

 郡山JCTで東北道に入り、福島西ICへ。この間は問題なく走れた。

 福島西ICで東北道を降りると福島市内へ。

 福島からは国道115号で浜通りの相馬に向かう。

 福島の市街地を過ぎたところで最初の峠を越えるが、無事、通過。峠の周辺は雪景色だが、路面に雪はなかった。

 最大の難関は霊山(825m)越えだ。

 ここでは幸いなことに気温が上がり、かなり強い日差しになったので路面の雪はシャーベット状になっていた。そのおかげでタイヤのグリップがあり、転倒することもなく走れた。霊山直下のゆるやかな登りを慎重に走りつづけ、ついに伊達市と相馬市の市境の峠に到達。峠の周辺はかなりの積雪の雪景色だが、路面に雪はなかった。アイスバーンもなかった。

 阿武隈山地の名無しの峠を下っていくと、周囲の雪はスーッと消えていく。

 山地から平地に下り、まもなく開通する常磐道の相馬IC(南相馬IC~相馬IC間は4月8日に開通)の近くを通り、相馬市の中心、中村の市街地に入っていく。そしてJR常磐線相馬駅前でV-ストロームを止めた。大きな難関を突破したのだ。

「勝ったな!」

 カソリ、賭けに勝ち、浜通りの北側にやってきた。

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東北道の福島西ICに到着

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福島から国道115号を行く

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霊山の雪

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国道115号の名無し峠

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JR常磐線相馬駅