「鵜ノ子岬→尻屋崎2012」(6)
いわき市の四倉舞子温泉「よこ川荘」で迎えた3・11の朝。「東日本大震災」からちょうど1年がたったのだ。
渡辺哲さんと一緒に「よこ川荘」の周辺を歩く。隣の温泉旅館「なぎさ亭」は大津波に襲われ、3階建の1階部分が全滅、瓦礫はほとんど撤去されたが廃業した。
舞子浜の海岸線を走る県道382号を渡り、海岸に出る。天気は曇り。冬を思わせるような冷たい風が吹き、太平洋の水平線上には厚い雲が垂れ込めている。
「この海が1年前、牙をむいて襲いかかってきたのか…」
「よこ川荘」に戻ると納豆と目玉焼き、塩ジャケの朝食を食べ、8時、出発。前日と同じようにカソリのスズキV-ストロームが先を走り、渡辺さんのヤマハ・セローがそれにつづいた。
国道6号から県道41号に入り、県道35号との交差点まで行ったところでバイクを止め、ここで渡辺さんと別れた。自販機のカンコーヒーで別れの乾杯。それは同時に大津波で亡くなった大勢の方々への献杯でもあった。
渡辺さんは県道35号を北へ。
カソリはそのまま県道41号を走り、国道399号に出た。
この国道399号は、爆発事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の20キロ圏で通行止になっている国道6号の、最短迂回路になっている。
小川から北上し、一気に山中に入っていく。国道399号を北上すると、周囲はあっというまに雪景色に変っていく。前日は東北の広い範囲で大雪が降ったのだ。峠道にさしかかると、路面は雪とツルンツルンのアイスバーン…。とてもではないが、V-ストロームで走れるような状態ではなかった。
国道399号は通行止にこそなっていなかったが、地元の人に聞くと、チェーンを装着した四駆でも走行できるかどうかのような路面状況だという。
国道399号はこの先、いくつもの峠を越えていわき市から川内村、田村市、葛尾村、浪江町と通って飯舘村に通じている。狭路の区間は舗装林道のような道。交通量も極めて少ない。そんな国道399号を走り、飯舘村からは八木沢峠を越える県道12号で南相馬市の原町に出るつもりでいた。
その国道399号が通れない。
「さー、困った…」
四倉舞子温泉の「よこ川荘」
3・11の1年後の太平洋
海岸には瓦礫の山
「よこ川荘」の朝食
「よこ川荘」を出発
渡辺哲さんとの別れ。「またな~!」