賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「伝説の賀曽利隆オンライン」(45)

(2003年7月5日)

 中国を中心として世界で猛威をふるった新型肺炎のSARSですが、予想した以上に、急速に終息してくれました。ほんとうによかったですね。中国の北京では韓国からの観光団を迎え、盛大にSARSの終息を祝うセレモニーがおこなわれ、その様子がテレビニュースで流されていました。

 このSARS禍で中止に追い込まれたバイクツアー「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」ですが、

「もう大丈夫!」

 ということで、9月25日から10月4日までの日程でおこなうことになりました。最初は1年の延期も仕方ないかなあ…と、けっこう弱気になっていましたが、年内にこうして再度、トライできるようになったことをすごく感謝したい気持ちです。

 中国・東北地方最大の都市、瀋陽を出発点にし、中国と北朝鮮国境を流れる鴨緑江に面した丹東に行き、そこから北朝鮮との国境に沿って長白山、朝鮮名の白頭山を目指します。

 この山が鴨緑江の源流になりますが、1日かけて山頂まで登ります。

 山頂の天池の中央が中国と北朝鮮の国境。ぼくは2001年の「北朝鮮ツーリング」では朝鮮民族の聖山、金剛山に登りましたが、この白頭山はそれ以上の聖山。白頭山登山はおおいに期待しています。

 長白山(白頭山)からは日本海に流れ出る豆満江に沿って走ります。この川が中国と北朝鮮を分けています。そして中国内の道の尽きる所、防川が中国・北朝鮮・ロシアの3国国境。そこの展望台に立ち、豆満江の流れと3国国境地帯を見下ろします。

 今回の「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」は、中国側から特別な許可をもらって実現したもので、一般のツアーではまず入れないようなエリアをバイクで行くものです。料金もすごく安く設定されていますので、一人でも多くのみなさんに参加していただきたいと心より願っています。

「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」を皮切りに、「中国・東北地方(旧満州)ツーリング」、瀋陽からの「北朝鮮ツーリング」、さらには上海か青島、天津あたりを出発点にしての「中国一周ツーリング」あたりまでを実現できたらいいなあと思っています。 その第1弾、「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」を一緒に走りましょう!

(2003年7月19日)

 バイクツアーに力を入れている旅行社「道祖神」の「カソリと走ろう!」シリーズ第8弾目、「アラスカ縦断」に今日、これから出発します。

 成田発14時55分のKE(大韓航空)704便でソウルに飛び、KE087便でアラスカのアンカレッジへ。アンカレッジ到着がやはり今日の09時25分というのが、いくら日付変更線を越えるからといっても、何か不思議で、奇妙な気分です。

 アンカレッジに到着するとすぐにバイクに乗り、北に向かって走り出します。

 フェアーバンクスを通り、アラスカの大河ユーコン川を渡り、北極圏に入っていきます。そして北米大陸の道の尽きるところ、北極海に面したプルドーベイの町を目指します。 ぼくは今から30年以上も前になりますが、1971年から72年にかけての「世界一周」でアラスカに足を踏み入れました。そのときはカナダのドーソンクリークからアラスカハイウエーでアラスカのフェアーバンクスまで走りました。

 それ以来ということで、30年ぶりのアラスカにはおおいに期待しています。

 夏の「アラスカ縦断」にひきつづいて、冬(現地の夏)には「カソリと走ろう!」シリーズ第9弾目、「パタゴニア縦断」が予定されています。

 南米・チリのサンチャゴに飛び、チリ南部のオソルノの町からバイクで走り出します。アンデス山脈の峠を越えてアルゼンチンに入り、猛烈な風が吹きまくることで知られているパタゴニアを南下していきます。そしてマゼラン海峡を渡ってフェゴ島に入り、ビーグル水道に面した世界最南の町、ウシュワイアまで行きます。さらにウシュワイアからは南米大陸の道の尽きる地点を目指します。

「南米最南の地」というのは、ぼくにとっては1984年から85年にかけての「南米一周」以来のことになります。夏は北米大陸の最北の地へ、冬は南米大陸の最南の地へと、昨年の「ユーラシア大陸横断」同様に壮大なスケールのバイクツアーです。

 詳しくは「道祖神」までお問い合わせ下さい。

(2003年7月31日)

「アラスカ縦断」から帰ってきました。無事に「アンカレッジ→プルドーベイ」の往復3000キロを走りきれたことをうれしく思っています。

 我々はすごくラッキーでした。この季節だと、まずは見られない北米大陸の最高峰、マッキンリー山(6194m)を3日連続で見ることができました。抜けるような青空を背にしたマッキンリー山の雪の白さが際立っていました。

 アラスカ中央部の中心都市、フェアーバンクスを過ぎると、待望の北極海に通じるダートのダルトンハイウエーに入っていきました。アラスカの大河ユーコン川を渡り、北極圏(アークティックサークル)に突入。白夜の世界に入ると、一晩中、明るいのでキャンプの焚き火を囲んでの宴会も異様なほどに盛り上がりました。ただ、蚊の多さにはさんざん悩まされましたが…。

 極北のブルックス山脈の峠を越えると風景は一変し、針葉樹林は消え、広大なツンドラ地帯が地平線のはてまでも広がっていました。その中に延びる一本道をただひたすらに北極海を目指して走ったのです。

 夏のツンドラ地帯は一面の緑の草原で、その上に立つと、水を吸ったスポンジのようなフカフカ感でした。

 ここでの蚊のすごさは猛烈!

 人のまわりには蚊柱が立ちます。昨年のシベリア横断で見た蚊柱とは比較にならないほどで、北極圏のすごさをあらためて思いしらされました。

 アンカレッジから1500キロを走破してプルドーベイに到着。「アラスカ軍団」のメンバーの1人、藤元さんのつくってくれた「アラスカ縦断成功!」の横断幕を掲げ、我々は歓喜の声を上げました。

 ノーススロープ油田の根拠地、プルドーベイから北極海までは石油会社のバスツアーのみでいかれるのですが、我々はバスに乗って北極海の海岸へ。長く弓状に延びる砂浜に着くと、さっそく「アラスカ軍団」のメンバーの1人、北川さんと北極海に飛び込んだのです。極北の冷たい海につかりながら、

「ヤッタゼー!」

 と、思いっきり叫んでやりました。

「アラスカ縦断」の往復3000キロを走りきってアンカレッジに戻ってくると、我ら「アラスカ軍団」の大宴会は夜明け近くまでつづくのでした。

 さー、次は「中国ツーリング」。9月25日から10日間の「中国北朝鮮国境2000キロを行く!」、みなさん、ぜひとも一緒に走りましょう!