賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「伝説の賀曽利隆オンライン」(42)

(2003年4月25日)

 新型肺炎のSARS(サーズ)が猛威をふるっています。これにはまいりました…。感染源とされる中国では患者数が2000人を突破し、中国政府のSARS隠しもあって、世界中に衝撃を与えています。旅行客も激減で香港を拠点とする大手航空会社は倒産寸前といった噂も流れています。

 ぼくにとって何がまいったかというと、みんさんにお伝えしてきた「中国・東北地方ツーリング」のバイクツアー、「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」への影響で、もうこれは中止するか、もしくは延期するしかないなと弱気になっていました。

 で、そのことを告げようと、昨日、このバイクツアーを実質的に主催する「ツアー・プランアーズ・オーバーシーズ」社長の藤間剛さんに会いました。

 すると藤間さんには「なあ、カソリ、中国には何人、いると思う。12億だぞ!」といわれてしまいました。12億人のうちの2000人などは、数のうちにも入らないくらいの微々たるものだというのです。なるほど。それと、すでに申し込まれた何人ものみなさんのことを考えると、そう簡単に中止するとか延期するなどともいえません。

 とうことで藤間さんと相談の結果、「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」は、予定どおりに決行することに決めました。

 昨日の時点では中国・東北地方からはSARSの感染者は1人も出ていませんし、我々の乗る飛行機も、「東京→瀋陽」の直行便で、北京空港などには立ち寄りません。この先、もし中国・東北地方が外務省の危険地域に指定され、危険情報の第3ランク、「渡航の延期をおすすめします」に指定されたときは、またそのときに考えようということになりました。

 SARSが1日も早く終息してくれることを心底、願っています。

 ところで5月29日に出発するこのバイクツアーですが、5月から6月にかけては、中国・東北地方は1年のうちでも一番、よい季節だといいます。参加されるみなさんには、中朝国境地帯という世界のホットラインを見ていただくだけでなく、存分に中国・東北地方のすばらしさをも楽しんでもらえたらと思っています。「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」のお問い合わせ、並びに参加申し込みは「ツアー・プランアーズ・オーバーシーズ」までお願いします。

 また「バイクはちょっと…」という方には、同行のマイクロバスに乗って行くという方法もあります。

 みなさ~ん、ぜひとも一緒に中朝国境を、中国・東北地方を駆けめぐりましょう!

(2003年4月30日)

 非常に残念であり、悔しいことでもあるのですが、「中国・東北ツーリング」の「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」のバイクツアーは急きょ中止することにしました。 新型肺炎のSARS(サーズ)がますます猛威をふるい、「北京封鎖か?」などという新聞の大見出しを見ると、仕方のない決定でした。このバイクツアーを楽しみにして参加を申し込まれたみなさんには、なんとも申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 このバイクツアー実現のために、日本側で実際に動いた「ツアー・プランナーズ・オーバーシーズ」社長の藤間剛さんにも同様の気持ちです。

 今から35年前、同じオランダ船の「ルイス号」に乗って日本を飛び出した仲間同士ということで、随分と無理を聞いてもらいました。藤間さんは「いやー、おもしろかった。久々に、俺の旅行屋としての心に火がつけられたよ」といって、今回の一部始終をおもしろがってくれたのが、せめてもの救いでした。

 また、中国側では瀋陽の「中国旅行社」の女性副社長、王麗華さんがじきじき動いてくれました。そのおかげで、ツアー料金以上の宿泊とか食事が可能になったのです。さらに王麗華さんのご主人は中国・遼寧省の公安トップの方で、ご主人の力添えもあって、今回のバイクツアーに特別な許可が降り、世界の緊張地帯といってもいい中国・北朝鮮国境をバイク・ツアーで走れるようになったのでした。

 ぼくは王麗華さんに会えるのをすごく楽しみしていました。彼女は遼寧大学に日本語学科ができたときの第1期生だといいます。娘さんは今、九州大学に留学中。日本人と見分けがつかないくらいに日本語が上手だといいます。このように、王麗華さんは中国でも第一級の知日派の方なのです。

 藤間さん、王麗華さんともに、今回のバイクツアーには同行してくれることになっていたので、お2人とはいろいろと旅の中で話せると期待していたのですが…。

 SARSが終息したら、また時期をあらためて、「中国・北朝鮮国境2000キロを行く!」を含めた「中国・東北ツーリング」をおこないたいと思っています。今回、参加の申し込みをして下さった方々を含め、どうぞみなさん、次回にご期待下さい。