「青春18きっぷ2010」(49)
第7日目(新潟→東京・その7)
磐越東線の小野新町駅に戻り、14時09分発のいわき行に乗った。3両編成のディーゼルカー。列車は夏井、川前と通り、夏井川渓谷に入っていく。
ここでは阿武隈山地屈指の渓谷美が見られる。急流や滝、淵が連続する変化に富んだ景観。全国的に知られた紅葉の名所で、その季節になると列車は徐行運転するという。
川前駅の次の江田駅(無人駅)が夏井川渓谷の探訪の拠点。駅前の磐城街道の県道41号を川前駅の方向に歩いていけば、「籠場の滝」が見られる。その先には「いわや旅館」があるが、ここでは食事のみも可。名物の鯉料理やイワナ料理が食べられる。
江田駅からのもうひとつのオススメコースは「背戸峨廊」だ。夏井川渓谷の支谷で岸壁がそそり立ち、奇岩が林立し、滝が連続する。遊歩道があって徒歩2時間半ほどのコースになっている。
列車は夏井川渓谷を抜け出ると小川郷、赤井と停まり、14時52分、終点のいわき駅に到着。これで磐越西線・磐越東線の全線を完乗し、「新潟→いわき」の本州横断を達成した。日本海から太平洋へ、太平洋から日本海へという「本州横断」ルートは「新潟→いわき」に限らず、どこもいい。
いわき駅では乗り継ぎ時間が20分ほどあるので、改札口を出、駅前を急ぎ足でぐるりとまわった。
いわき駅はいわき市の中心的な駅。もともとは「平駅」だったが、それが平成6年(1994年)に今の「いわき駅」に変わった。駅名が変わった当時、常磐線の「いわき行」の列車を見るたびに、もしくは乗るたびに違和感をおぼえたものだが、十数年もたつとさすがに慣れたようだ。
いわき市が誕生したのはそれよもはるか以前の昭和41年(1966年)のことだ。
平、磐城、勿来、常磐、内郷の5市と四倉、小川、遠野、久之浜の4町、川前、三和、好間、田人、大久保の5村が合併し、日本最大の市域を持ついわき市が誕生した。日本一広い市域は、静岡と清水の合併でできた静岡市に抜かれるまでつづいた。いわき市の誕生は平成の大合併のさきがけとなるものだった。
日本でも一、二の広さの「いわき市」だけあって、ここはすごい所なのである。
何がすごいかというと、いわき市は知られざる温泉の密集地。共同浴場の「さはこの湯」のある「いわき湯本温泉」のほかにも、市内の各地に温泉が何湯もある。
「温泉めぐり日本一周」(2006年~2007年)では、1年間で3063湯(これはギネスの世界記録になっている)の温泉(温泉地)に入ったが、いわき市では勿来温泉を皮切りに白米温泉、川部温泉、下川温泉、カンチ山温泉、原木田温泉…と、全部で19湯の温泉に入った。
それとこれもあまり知られていないことだが、いわき市は大変な「林道天国」なのだ。
昨年の「林道日本一周」(2010年)では、日本中の林道を全部で313本、バイクで走った。そのうちのいわき市内の林道といえば、目兼横川林道を皮切りに横川仏具林道、弥次郎林道、藤ノ木沢林道、四時川林道…と、全部で16本の林道を走った。これはすごい数だ。
「日本一周」では必ずいわき市の海岸線を通っていくが、ここはまた岬の宝庫なのだ。
関東と東北の境の鵜ノ子岬からはじまり、小名浜漁港を見下ろす三崎から北へ、竜ヶ崎、合磯崎、塩屋崎、富神崎…と岬が連続する。ここは「岬めぐり」には最適なエリアになっている。
東京からいわき市というのはけっこう近い。常磐道では200キロほどでしかない。車やバイクを飛ばせば2時間ちょっと。常磐線の特急列車でも2時間20分ほどで着く。
「東北の湘南」といわれるほどで、気候は温暖。冬でもほとんど雪が降らないのでバイクでも行ける。旅の魅力満載のいわき市なのだ。
小野新町駅に戻ってきた
いわき行の列車がやってきた
夏井川渓谷(※参考写真)
いわき駅に到着
いわき駅を見下ろす
いわき駅前を通る国道399号