賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「青春18きっぷ2010」(47)

第6日目(新潟→東京・その5)

 郡山駅の改札口を通り抜けると6番線の磐越東線のホームへ。隅っこに押しやられたような郡山駅の6番線だ。

 11時20分発の小野新町行に乗る。2両編成のディーゼルカーでかなりの乗客が乗っている。

 小野新町行は定刻を過ぎても発車しない。東北本線に遅れが出ているとのこと。このあたりがローカル線の悲しさ。本線優先で、東北本線の列車の到着を待っているのだろう。

 磐越東線小野新町行は第1本目の列車から数えて45本目になるが、45本目にして初めての遅れだ。

 それにしても日本の鉄道はすごいと思う。よっぽどのことがないかぎり、1分1秒の遅れもなく運行されている。函館本線の1両編成の列車も、定刻通りの運行だった。あの大雪にもかかわらず…。

 小野新町行は5分遅れで郡山駅を出発。平行して走る東北本線の線路と分れ、単線の線路を行く。阿武隈川の鉄橋を渡ると、前方には阿武隈山地のゆるやかな山並みが連なっている。それに向かって一直線に走る。ディーゼルのエンジン音も軽やかだ。

 阿武隈川沿いの郡山盆地から阿武隈山地に入ると、小雪が舞っている。

「三春人形」や「三春滝桜」で有名な三春は梅、桃、桜が一度に競いあって咲くところからその名があるが、いかにも春の遅い東北を感じさせる。

 三春駅の次は要田駅。ここには駅のすぐ近くに要田温泉がある。要田駅の次が船引駅で、大半の乗客が降りた。ここは田村市の中心。「田村市」といっても聞きなれない市名だが、2005年に田村郡船引町、常葉町、大越町、滝根町磐越東線沿いの4町と都路村が合併して誕生した。同じ田村郡でも三春町と小野町は合併しなかった。

 船引駅を過ぎると、ぼくは目をこらして車窓の風景を眺めつづけた。列車のエンジン音にも耳を傾けた。阿武隈山地分水嶺の峠をみきわめようとしたのだ。

 だが、難しい…。阿武隈山地は高原状のなだらかな地形だからである。

 船引駅の次は磐城常葉駅だが、まだ峠は越えない。次の大越駅はいかにも峠を連想させる地名だが、まだ峠は越えない。地図とも照らし合わせ、その次の菅谷駅神俣駅のほぼ中間点が峠であることをつきとめた。

 この峠(平坦な地形なので、誰も峠だとはいわないが)を境に西側は中通り、東側は浜通りということになる。

 福島県奥羽山脈以東は阿武隈川流域の「中通り」と太平洋岸の「浜通り」に分けられる。しかし、こうして磐越東線阿武隈山地を越えていくとよくわかるのだが、その間にもうひとつ、「阿武隈」もしくは「阿武隈高原」が必要なのである。阿武隈高原は中通り浜通りの両方にまたがっている。

 こうして阿武隈山地の峠越えを楽しんでいるうちに、12時10分、終点の小野新町駅に到着した。

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郡山駅の改札口

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磐越東線小野新町行に乗車

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郡山を出発

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遠ざかっていく郡山の中心街

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三春駅

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雪が降っている

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船引駅

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磐城常葉駅

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青空が見えてくる

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菅谷駅

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阿武隈山地の峠を通過

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車内はガラガラ

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阿武隈山地の山並み

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小野新町駅に到着