賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

「青春18きっぷ2010」(22)

第3日目(函館→旭川・その7)

 15時29分、小樽に到着。ここでは次の列車まで3時間近くある。

 改札口を出ると、何ともうれしいことにカブタンとカブタン旦那が出迎えてくれていた。カブタンとは熱い抱擁をかわしたいところだが、カブタン旦那の目の前ではそれもかなわず、お2人とはガッチリ握手して再会を喜びあった。

 カブタンは素敵な女性で行動的。函館の項で「北海道遺産」のおもしろさにふれたが、それはすべてカブタンから教えられたもの。カブタン旦那は大陸人の風貌を持っている人で、やさしくておおらか。何ともいい夫婦なのである。

 カブタンの勤務地は旭川、カブタン旦那の勤務地は札幌。離れ離れに住んでいるお2人だが、今日は日曜日ということもあって、カブタンが札幌まで行き、カブタン旦那の車で小樽まで来てくれた。ほんとうに感謝感激。

 小樽ではどうしても手宮にある「小樽市総合博物館」に行きたかった。そこにあるという北海道の鉄道起点碑の「ゼロ哩碑」を見たかったのだ。

 カブタン旦那が運転する車に乗り込むと、お2人はまず手宮線の廃線跡につれていってくれた。

「おー、残っているんだ」

 次に小樽運河に出、小樽運河公園の前を通り、手宮の「小樽市総合博物館」に到着。ここは旧小樽交通記念館。鉄道好きにはたまらない博物館だ。

 入口には列車レストランがあり、アメリカ人の鉄道技師、ジョセフ・U・クロフォードの像が建っている。

 このジョセフ・U・クロフォードが北海道初の鉄道、幌内鉄道(後の手宮線)建設の大きな力になった。当時の北海道開拓使(長官は黒田清隆)は積極的に外国人を登用し、「追いつけ追い越せ」で、文明開化を強力に推し進めていった。

 幌内鉄道は明治13年1月に建設工事が始まり、その年の11月には札幌までが完成している。幌内炭鉱のある幌内(現三笠市)までの全線が完成したのは明治15年11月。日本では「新橋-横浜」、「大阪-神戸」に次いで3番目に誕生した鉄道になる。全長91・2キロ。「手宮-幌内」間には開運町、銭函、札幌、江別、幌内太の停車駅があった。

 幌内鉄道の第1号機関車が「義経号」、第2号機関車が「弁慶号」で、「小樽市総合博物館」には第6号機関車の「しづか号」が展示されている。

 館内の見学はあとまわしにして、博物館の裏手にある北海道の鉄道の起点となる「ゼロ哩碑」(北海道鉄道開通起点碑)を見る。

「間に合った!」

 あっというまに日の暮れるこの季節なだけに、こうして明るいうちに見ることができてもう感無量。北海道の鉄道はここから始まった。

 次に、鉄道記念物にも指定されているレンガ造りの機関車庫、転車台と見てまわる。

 そのあとで館内を見学した。

 何といってもすごいのは「しづかホール」に展示されている「しづか号」。迫力満点。アメリカの西部劇を連想させるダイナミックさを持った機関車だ。その後には一等客車の「い1号」が連結されている。

「しづか号」と「い1号」はともに鉄道記念物に指定されている。

 そのほか国産の蒸気機関車としては2番目になる「大勝号」も展示されているが、やはりこれも鉄道記念物に指定されている。「大勝号」は手宮工場でつくられた。北海道開拓のシンボルマーク、赤い星のヘッドマークがつけられている。

 館内で目を引くのは手宮港の模型だ。石炭を積んできた貨車から直接、船に積み込む様子がよくわかる。幌内鉄道の試運転の模型では、日米両国の国旗をつけた「弁慶号」が2両の客車を引いて木橋を通過していくシーンが再現されている。石置屋根の家々からは多くの人たちが出て、列車を見上げたり、手を振ったり、「万歳!」をしている。何とも印象に残る幌内鉄道の試運転の模型だ。

 カブタンとカブタン旦那のおかげで明るいうちに「ゼロ哩碑」を見ることができたし、こうして北海道一の鉄道博物館、「小樽市総合博物館」も見ることができた。

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小樽市内の手宮線跡

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小樽市総合博物館前の列車レストラン

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ジョセフ・U・クロフォード像

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これが北海道の「ゼロ哩ポイント」

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転車台

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一等客車「い1号」を連結している「しづか号」

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手宮港の模型

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幌内鉄道の試運転の模型