「青春18きっぷ2010」(20)
第3日目(函館→旭川・その5)
雪の長万部の町を歩き、長万部温泉の湯に入り、長万部駅に戻ってきた。
だが小樽行の発車時刻、12時11分までには、まだ時間がある。
そこで駅近くの「かにめし本舗かなや」まで行き、長万部名物の駅弁「かにめし弁当」(1050円)を買い、それを長万部駅の待合室で食べた。ほぐしたカニ身がシイタケやグリンピース、錦糸卵などと一緒にのっている「かにめし弁当」は、長万部ならではの味覚だ。
12時11分発の函館本線・小樽行に乗車。1両編成のディーゼルのワンマンカー。ほとんどガラガラの乗客のまま、長万部駅を発車。さきほど渡った長万部温泉に通じる跨線橋の下を過ぎると、左に大きくカーブし、直進する室蘭本線の線路と分かれていく。
函館本線は国道5号と平行して走っている。ところどころで樹林の間からは雪煙りを巻き上げて疾走する大型トラックが見えた。
二股駅を過ぎると蕨岱(わらびたい)駅。雪のホームにはポツンと鉄道車両風の駅舎が建っている。ここは峠の駅。長万部からここまでの川は太平洋側に流れていくが、蕨岱駅を過ぎると、日本海側に流れていく黒松内川になる。
中央分水嶺の名無し峠になるのだが、この峠はきわめて重要だということでぼくは「蕨岱峠」と呼んでいる。
ここは地形的に見ても重要なのである。
この峠を通る構造線(大断層線)は、太平洋(内浦湾)側の長万部から日本海(寿都湾)側の寿都(すっつ)にのびている。「長万部-寿都構造線」でもって渡島半島は北海道の本体につながっている。
この先、渡島半島が北海道の本体と別々になるときは、本州がフォッサマグナ西側の大断層線、「静岡-糸魚川構造線」でポッキンと折れるのと同じように、間違いなくこの「長万部-寿都構造線」でもって分かれる。
そのときは長万部海峡ができ、この蕨岱峠は長万部海峡に突き出た蕨岱岬になり、そこから函館本線は長い鉄橋でもって海峡を渡っていくことになる。もっともそれが何万年後か何十万年、何百万年後か知らないが…。
なお渡島半島の「渡島」は、明治新政府が北海道を11ヵ国に国分けしたときの1国。もしかしたらそのとき「渡島」と命名した人間は地学の知識があって、
「この半島はいつか島になる!」
という思いで「渡島」と名づけたのかもしれないなと、車中でそんな想像をめぐらせてみるのだった。
1両の列車は蕨岱駅を過ぎると、軽快なエンジン音を響かせて峠を下り、黒松内町の黒松内駅に停車。次は熱プ(ねっぷ)駅。熱プ駅を過ぎると目名峠を越える。列車は峠のトンネルを抜けていく。
さきほどの蕨岱峠は地学的に見て重要な峠だが、この目名峠は植生上から見てきわめて重要だ。この峠が日本のブナの北限になっている。
黒松内町には北海道遺産にも指定されている歌才のブナ林がある。そこには伐採をまのがれた樹高30メートル、幹の太さ1メートルというような大木もある。
落葉広葉樹のブナの木は、日本の風景を日本らしくいている要素のひとつ。そのブナが消えると、異国の風景の中に入っていくような気がする。
目名峠を越えると急にトドマツやエゾマツの針葉樹が目につくようになるが、車窓に顔をつけ日本離れした風景を眺めていると、「北海道は日本の新大陸だ!」と思ったりもする。
列車は目名峠下の目名駅を過ぎ、ニセコ連峰の山裾を通っていく。
蘭越、昆布、ニセコ、比羅夫と通り、13時42分、倶知安(くっちゃん)に到着。
倶知安駅の発車は14時04分。20分以上あるので駅の外に出、ボソボソ雪の降る町を歩いた。
長万部駅に戻ってきた!
長万部名物の「かにめし」
「かにめし」を食べる
小樽行のワンマンカー
蕨岱駅に到着
雪で前方は見えない…
目名峠周辺の雪景色
倶知安駅に到着
雪原のような倶知安駅のホーム
列車は雪まみれ
雪の倶知安駅
雪が激しく降っている
倶知安駅前