「青春１８きっぷ２０１０」（１２）

第２日目（東京→函館・その７）

　東北本線の一関駅では、盛岡行２両編成のワンマンカーに乗り換える。東北本線もいよいよ最後の行程だ。

　１４時３７分、一関駅を出発。１０分ほどで平泉に到着。平泉駅を過ぎると左手にはこんもりした森が見えてくる。中尊寺の森だ。

　次の前沢駅では７分間の停車。貨物列車の通過待ちというアナウンスが流れたが、結局、貨物列車は通過していかなかった。ここは東北では「米沢牛」と並ぶブランド牛、「前沢牛」の産地。かなわぬ夢ではあったが、無性にぶ厚い前沢牛のステーキにかぶりつきたくなった。腹がへった…。

　水沢、金ヵ崎と通り、六原駅に着く頃には天気は崩れ、雨が降り出した。列車に乗っているので濡れるわけでもないのに、雨の車窓を見ていると気分がブルーになり、心の中が濡れてくるようだ。

　六原を過ぎると和賀川を渡って北上だが、残念ながら和賀川の写真を撮り損ねた。

「あッ」

　と思う間もなく和賀川を過ぎ、列車は北上の町中に入っていく。鈍行列車といってもそうモタモタ走っているわけではない。

　和賀川は北上の大きな支流で、東北でも有数の清流。

　その源、奥羽山脈の和賀岳（１４４０ｍ）周辺は、東北でも一番の豊かな自然が残されているといわれている。

　北上駅からは、奥羽山脈を越えて秋田県の横手に通じる北上線が出ている。

　北上駅ではかなりの乗客が乗り、ほぼ満員状態で発車。次の次、花巻駅で車内の大半の乗客は降りた。水沢（奥州市）、北上、花巻とつづく北上川流域の北上盆地の一帯は、まさに岩手県の中核を成すといっていい。

　花巻といえば「宮沢賢治」だ。

　宮沢賢治は明治２９年に花巻で生まれ、昭和８年、花巻で死んだ。わずか３７年という短い生涯だった。

　ということで、ここではぜひとも、秋に花巻を訪ねた時の、宮沢賢治がらみの写真を見てもらおう。

◇◇◇

　花巻駅から歩いて行けるぐらいのところを北上川が流れている。そこは宮沢賢治命名のイギリス海岸。川岸の風景がドーバーの有名なホワイトクリフ（白い崖）に似ているからだという。

　北上川を渡った丘陵上には「宮沢賢治記念館」。そこからは北上川の流れと花巻の町並みが見渡せた。

「宮沢賢治記念館」には賢治の全生涯が展示されている。

　それを見ると、賢治という人は３７年間をあっというまに駆け抜け、１００年分くらいの仕事を成しとげたかのように見える。人間、ただ生きていればいいというものではない…と、教えられた。

「宮沢賢治記念館」の前には、レストラン「山猫軒」がある。賢治の作品、「注文の多い料理店」に出てくる西洋料理店の店名にちなんだ「山猫軒」なのだろう。

　一番のおすすめメニューの「イーハトーブ定食」を食べたが、理想郷の「イーハトーブ」も宮沢賢治の命名。「イーハトーブ定食」には岩手の郷土色ひっつみと天ぷら、煮物、サトイモ、キノコが入っていた。そこから眺める北上山地の風景は目に残った。

◇◇◇

　さて鈍行列車旅だ。

　花巻を出ると、雨は本降りになる。これから向かう青森が雪でないことを願った。大雪で列車が停まってしまったらもう万事休す。すべての計画を練り直さなくてはならない。まあ、そのときはそのときと腹をくくった。

　ザーザー降りの中、２両編成の電車は走りつづけ、１６時１４分、終点の盛岡に到着。上野駅を出てから１１時間０４分後のことだ。これにて東北本線の全線完乗。

　この先、「盛岡→八戸」間は「いわて銀河鉄道」、「八戸→青森」間は「青い森鉄道」になるからだ。

　降り立った盛岡駅のホーム上で、

「やったね！」

　と、ガッツポーズをとるカソリだった。

盛岡行２両編成の電車に乗る

平泉周辺の車窓の風景

平泉駅に到着

中尊寺の森を見る

広々とした北上盆地を行く

国道４号と併走！

六原駅。ここを過ぎると雨になる

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（※２０１０年秋）花巻を流れる北上川。増水しているのでイギリス海岸は川の中

（※２０１０年秋）宮沢賢治記念館からの眺め

（※２０１０年秋）レストラン「山猫軒」

（※２０１０年秋）「山猫軒」の「イーハトーブ定食」

（※２０１０年秋）「山猫軒」からの眺め

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雨の古館駅

終点の盛岡に到着