賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(74)豊島(香川)

(『ジパングツーリング』2002年5月号 所収)

 土庄港発18時50分の小豆島フェリー「せとしお」で豊島に向かう。

 黒々とした灯ひとつ見えない小豊島のわきを通り過ぎると、豊島の家々の灯が見えてくる。その向こうには高松の町明かり。異様なくらいに明るい。空まで赤く染まっている。

 反対側の岡山県側はといえば、灯が途切れ途切れの1本の線になってつづいている。ピカピカッと点滅する瀬戸大橋の灯も見える。

 19時40分、豊島の家浦港に到着。島に1軒ある民宿「南国」に電話したが泊まれなかった。で、港前の喫茶店でチャーハンを食べ、島の反対側(南側)の海岸で野宿した。

 水平線を赤々と染める高松の夜景がまばゆいほど。瀬戸内海にはいくつもの島々が黒々とした姿で浮かんでいる。

 翌朝は夜明けとともに起床。

 さすがに温暖な気候の瀬戸内海。11月も中旬になろうかというのに、野宿してもそれほど寒くはない。

 いったん家浦港に戻り、そこを出発点に豊島を一周する。ゆるやかな峠を越え、南海岸へ。山裾は棚田になっている。

 昨夜、野宿した海岸に近い甲生港へ。そこからは正面に男木島、その後に女木島が見えている。甲生港からは島の最高峰、壇山を間近に眺めながら峠を越える。すると小豊島と小豆島が目に飛び込んでくる。唐櫃港に寄って家浦港に戻ったが、20キロの「豊島一周」だった。

 豊島といえば産業廃棄物の不法投棄で大問題になったが、島全体から見れば名前どおりの、自然の豊かな島だ。