賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第49回 御前崎(おまえざき・静岡)

(共同通信配信 1990年)

 浜松の中田島砂丘は、日本三大砂丘の一つに数えられている。遠州の強風が砂丘の表面に幾何学模様の風紋を描いている。風紋の上に自分の足跡を残しながら砂丘を登り、砂丘のてっぺんから遠州灘を見下ろした。

 そんな浜松から天竜川の河口を渡り、国道150号で御前崎に向かった。その間には砂浜が途切れることなくつづいている。御前崎に近づくと千浜、合戸、浜岡と、長さ30キロにわたって砂丘が連続し、「南遠大砂丘」と呼ばれている。

 浜岡砂丘も歩いてみたが、海から吹きつけてくる風が強く、砂が地吹雪のように舞って流れていく。遠州灘の海岸の膨大な量の砂は、長い年月をかけて天竜川がはき出し続けたものだという。

 中部電力の浜岡原子力発電所を過ぎたところで国道を右折。シーサイドラインを走り、遠州灘と駿河湾を分ける御前崎に立った。相変わらず砂まじりの強風が吹き荒れている。ここは静岡県最南端の地で、伊豆半島南端の石廊崎よりもさらに南になる。

 岬近くの白羽(しろわ)には、国の天然記念物に指定されている三稜石の産地がある。三稜石は三角錘状になった礫で、日本では御前崎が唯一の産地になっている。強い風に吹き飛ばされた砂が石の表面をこすり、角をとがらせて出来る三稜石は、「風と砂の岬」、御前崎を象徴しているかのようだ。

 海岸から高さ30メートルほどの海食崖上の高台に登り、そこに建つ灯台へ。岬には不思議な魅力があって、なかなか立ち去り難い。喫茶店でコーヒーを飲みながら、御前崎の海に落ちていく夕日を眺めた。

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静岡県最南端の御前崎