賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(65)隠岐1(島根)

(『ジパングツーリング』2002年4月号 所収)

 山口県の萩を出発したのは午前9時。ここからが大勝負なのだ。鳥取県の境港発14時40分のフェリーで隠岐・島前の西ノ島に渡ろうと思うのだ。

 SMX50に「悪いな、悪いな」と何度も声をかけ、エンジン全開で国道191号を突っ走る。山口県から島根県に入り、11時30分、益田着。

 益田からは国道9号で浜田、大田と通り、14時05分、松江着。

「急げ!」

 中海の2つの島、大根島と江島を経由し、県境の水門の上を通って鳥取県に入り、境港のフェリー埠頭に到着したのは14時38分。

 間に合った! 萩から境港までは270キロだった。

 隠岐汽船の「フェリーおきじ」(4205トン)に飛び乗り、乗船券は船内で買った。甲板の軽食堂でカレーライス(510円)を食べながら、離れていく境港を眺めた。

 隠岐は島前と島後に分かれているが、島前・西ノ島の別府港に到着したのは17時25分。船はすぐに島後の西郷港に向かっていった。

 西ノ島では浦郷の民宿「海福屋」で泊まったが、宿の奥さんにはよくしてもらった。

“島民宿”はほんとうにいい。

 夕食はブリとイカの刺し身、カツオの煮つけ、カマスの焼き魚、サザエの壺焼きとうれしい隠岐の海の幸三昧。

 翌朝の朝食にも赤貝が出た。

 隠岐は島前と島後に分かれているといったが、島前は西ノ島と中ノ島、知夫里島の3島から成っている。その中でも西ノ島が一番、大きい。

 浦郷を拠点にして午前中は島の西側をまわることにした。

 西ノ島には島一周の道がないので、それぞれの道の尽きるところまで行く。

 まずは隠岐国の一の宮、由良比女神社に参拝。隠岐は日本の「島国」5国のひとつなのだ。

 スキッとした秋晴れで、空は抜けるように青い。SMXのエンジン音も弾んで聞こえる。海沿いの道を南下。珍崎の集落を過ぎると牛や馬の放牧地に入り、道は尽きた。

 次に三度(みたべ)へ。峠に達したところで鬼舞スカイラインに入り、鬼舞の展望台まで行き、そこからの眺望を楽しんだ。そして峠に戻り、三度の集落に下った。小さな漁港。右手に見える三度崎が大小合わせて180もの島々から成る隠岐群島の最西端になる。

 いったん浦郷に戻ると、今度は隠岐でも、というより日本でも、屈指の海岸美を誇る国賀海岸に行く。海に落ち込む断崖が浸食されて橋のような形になった通天橋や、高さ257メートルの断崖がストンと海に落ちている摩天崖を見る。通天橋、摩天崖は国賀海岸の2つの目玉。スケールの大きな海岸美が目の底に焼きつく。

 浦郷に戻ると、港前の「めるへん」で名物の「海鮮釜めし」(1000円)を食る。タコやイカ、貝などの入った釜めしだ。舞台を浦郷港から別府港へと移し、午後は西ノ島の東側をまわる。

 西ノ島の最高峰、焼火山(452m)をぐるりとまわるダート4・5キロの焼火山林道を走り、山頂直下の焼火神社に参拝した。城壁を思わせるような石垣の上に建つ社務所、巨大な岩窟の中に半分、隠れるようにして建つ本殿と、焼火神社は異様な感じを漂わせていた。

 さらに、紅葉がはじまり赤や黄に染まった高崎山(435m)を間近に眺める舗装林道の黒木林道を走った。