賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの林道紀行(29)東北編(その1)

(『バックオフ』2005年7月号 所収)

みちのく5000(1)

          

「今、時代は東北だ!」

 と、声を大にしていおう。

 東北がおもしろいぞ!!

 本誌の「林道ネットワーク」では、林道ツーリングに絶好のフィールド、東北が手薄になっているが、「高藤編集長、ワタシがそれを埋めましょう!」

 という気分で、ぼくは今、東北の林道をガンガン走りたい気持ちでいっぱいなのである。

 東北には、知られざる林道が数多くある。

 そこを走るオフロードバイクのライダーや、4駆のドライバーはそれほど多くはないので、走りのおもしろさを存分に楽しめる。

 ダート区間が長いのも特徴だ。

 ダートに入ってすぐに舗装では興ざめだが、もうかんべんしてくれよと、いいたくなるほど延々とつづくダートもある。阿武隈山地の林道群のように、うまくつなげば、連続ダート100キロというようなコースもつくれる。

 東北をとりまく自然はきわめて豊かだし、温泉はあちらこちらに湧いているし、峠越えの林道が何本もあるし、関東周辺のようなうるさい規制もあまりないし‥‥と、いいことずくめなのだ。

 ということで、「林道の狼カソリ」は“みちのくの狼”となって、東北の林道をガンガン走りながら、温泉のハシゴ湯をし、峠をいくつも越えていこうと思っているのだ。

 ところで、東北の魅力というのは、それだけにはとどまらない。旅先で出会う東北人が最高にいいのだ。それに、津軽美人、秋田美人、庄内美人‥‥と、美人も多いし‥‥。

 バイクを走らせてフラッと立ち寄った町や村で出会った人に、まるで昔からの知り合いでもあるかのように、あたたかくふるまわれることが何度となくあった。

 その例をひとつ。

 新潟・山形県境近くの林道を何本かつないで走っていたときのことだ。あいにくと天気が崩れ、ザーザー降りの雨になってしまった。晩秋の冷たい雨だった。

 とある朝日連峰にほど近い山村でバイクを止めると、たまたま家の外に出てきた人と顔があった。ぼくは軽く会釈した。するとその人は、

「この雨では、大変だねー。ちょっと家に寄って、お茶でも飲んでいきなさい」

 と、声をかけてくれたのだ。その言葉に甘え、雨具を脱いであがらせてもらったが、自家製の漬物をいただきながら飲んだお茶のうまさは、今でも忘れられない。

 あれから10何年もたっているが、その方からは、毎年、毛筆の年賀状をもらっている。東北人には、そのような人肌のあたたかさがある。

 さて、「東北林道総ナメ計画」だが、東北を南から北へ6ブロックに分け、そのブロック内の林道を徹底的に走りまわってやろうと思っている。全行程5000キロ。“みちのくの狼カソリ”、東北を激走するのだ。

 さー、「みちのく5000」の開始だ!

(エリアA)

 関東から東北へ、林道経由で入っていくルートがおもしろい!

 田代山林道、安ヶ森林道の2本の林道では、帝釈山脈を越えて奥会津に入っていく。大川林道では、那須板室温泉から那須連峰の峠を越え、奥会津の中心、田島へ。それともう1本、那須連峰北麓の阿武隈川上流から甲子峠を越え、奥会津の下郷に通じる鎌房・甲子林道がある。これら4本をメインにし、奥会津の林道を走ろう!

(エリアB)

 会津盆地を中心とする会津は、“会津国”というひとつの国のようなものだ。四方八方、山々に囲まれ、当然のことのように、おもしろい林道が何本もある。

 郡山から奥羽山脈の御霊櫃峠を越える御霊櫃林道や猪苗代湖北東の大滝山を越える三河小田川林道、猪苗代湖南側の安藤峠を越える黒沢林道、越後山脈を越え、新潟県の津川に通じる本名津川林道などをメインにし会津を走りつくそう。

(エリアC)

 阿武隈山地は、全体が高原のようななだらかな地形で、太平洋岸から、福島県の心臓部ともいえる“中通り”までの間の幅広いエリア。それだけに走りがいがある。

 このエリアは“我ら林道派”にはあまりなじみがないが、なかなかのおもしろい林道が何本もあるのだ。太平洋岸の楢葉町から阿武隈山中の滝根町へ、井出川林道→乙次郎林道→赤原遠山林道→子安川林道とつないで走ってみたい!

(エリアD)

 ここでは、山形・宮城県境の、奥羽山脈の峠越えルートの林道群を走ってみたい。

 峠がどこもいい。

 南からいうと、まず、南蔵王不忘山林道だ。山形県の上山から蔵王連峰の南、舟引山の山頂直下を越え、宮城県の白石へと下っていく。次に、二口峠を越える二口林道と、田代峠を越える田代林道。最後は花立峠を越える花立林道だ。これら4本の林道をメインにし、周辺の林道を駆けめぐろう!

(エリアE)

 北上山地は大山塊だ。南北に長く、東西に幅広い。北は青森県境、南は宮城県境までつづいている。最高峰は早池峰山(1914m)。

 このエリアで一番の林道といったら、盛岡から入っていく御大堂林道だ。御大堂山の山頂直下を越え、早坂峠へと通じている。この御大堂林道には、櫃取林道とか岩神林道が接続している。早坂峠周辺にも蒲小内林道など何本かの林道があるが、それらを総ナメだ!

(エリアF)

 このエリアでは、山形県から、秋田県を通って青森県へと、北東北を林道経由で縦断しよう!

 山形を出発点にし、日本海側の酒田に出、鳥海山の林道を走って、秋田県に入る。河北林道などの秋田県内の林道を走り、白神山地の相馬田代林道で長慶峠を越えて青森県に入る。現在は県道に昇格したが、まだ、かなりの距離のダートが残るかつての弘西林道も走ろう!

 ゴールは青森駅前だ。