賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(46)仙酔島(広島)

(『ジパングツーリング』2002年2月号 所収)

 北木島から笠岡に戻ると、国道2号で広島県の福山へ。激しい雨が降りつづいている。この雨は台風21号のもたらしたもの。

「クソッ、台風なんかに負けるもんか」

 と強がりをいってSMXを走らせる。

 福山からは県道22号を南下。大雨で氾濫寸前の芦田川を見ながら鞆ノ浦へ。

 鞆ノ浦といえば、古くから栄えた瀬戸内海航路の要衝の地。ちょうどこのあたりが瀬戸内海の中央になる。

 鞆ノ浦の目の前に浮んでいるのが仙酔島。バイクは港に置いて福山市営の渡船「第2べんてん」で仙酔島に渡る。風光明媚な小島。遊歩道を歩き、展望台に立つ。小島の浮かんだ雨の瀬戸内海もなかなかのもの。目の前の弁天島の向こうに見る鞆ノ浦の町並みがまたよかった。

 鞆ノ浦に戻ると、船着き場に隣り合った「遊々亭」で昼食にする。

 鞆ノ浦名物のタイを食べる。「タイのあら煮定食」(1000円)。よく味のしみ込んだタイのあら煮にヒラメなどの刺し身がついていた。

 昼食を食べ終わると、歴史に古さを感じさせる鞆ノ浦の町並みをぐるりとひとまわりした。

 このあたりが50㏄バイクのよさというもので、人の肩と肩がぶつかるくらいに狭い道も平気で走っていける。

 石製の船つなぎ石の残る港を見、「延喜式」の式内社にもなっている沼名前神社と臨済宗の古刹、安国寺を参拝した。

 なんとも心に残る鞆ノ浦だった。