賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第44回 蒲生田岬(がもうだみさき・徳島)

(共同通信配信 1990年)

 高知県の室戸岬から徳島県の阿南に至る長い海岸線は、室戸阿南国定公園に指定されている。南九州の日南海岸に似た風景。海の青さが強烈だ。この辺りは海士(あま)漁が盛んで、男たちが海に潜り、アワビやサザエなどを採っている。

 阿南海岸の、紀伊水道に突き出た四国本土最東端の岬が蒲生田岬。

「がもうだ岬」とか「かもだ岬」といわれるが、地元では「かもうだ岬」と呼んでいる。 岬には国道55号から入っていくのだが、その道のりは長く、道もわかりにくい。車のすれ違いが難しいところもある。

 深く切れ込んだ入江の北側には、天然の良港の椿泊がある。かつての阿波水軍の根拠地で、大将の森甚五兵衛に率いられ、文禄・慶長の役や大坂冬の陣にも参戦した。

 岬に守られるかのような蒲生田の砂浜は海亀の産卵地。アカウミガメ、アオウミガメ、タイマン、オサガメの4種類が、夏の満潮に乗ってやってくる。上陸すると後足で砂を掘り、1時間あまりをかけて200個ほどの卵を産み、また後足で砂をかけて海に戻っていくという。

 蒲生田の集落を走り抜け、スズキ・ハスラーTS50を道の行き止まり地点に停め、崖っぷちの遊歩道を歩いていく。最後は急傾斜の階段を登り、岬の灯台前に立った。

 目の前には四国最東端の伊島が横たわっている。伊島のはるかかなたには紀伊半島の山並みが青く霞んで見えた。

 紀伊水道は強風にあおられ、無数の波頭を見せている。その白さが海の青さに対比されてたまらなくきれいだ。対岸の紀伊半島の日ノ岬までは、わずか30キロほどの距離でしかない。

misakimeguri-44-9853

四国本土最東端の蒲生田岬