賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの林道紀行(28)追加原稿

■カソリおすすめのポイント…

秩父盆地を流れる荒川に沿って最奥の集落、栃本へ。その間の秩父路のおすすめポイントを何ヵ所か紹介しよう。このエリアでは盆地をとりまく山々を越える峠がすごくおもしろいが、それはまた…。

1、荒川の玉淀

秩父盆地を流れる荒川が関東平野に流れ出るあたりが玉淀。荒川の絶景地のひとつになっている。右岸には鉢形城跡。北に荒川、南に深沢川と、2つの谷に囲まれた鉢形城は天然の要害の地。文明8年に長尾景春によって城が築かれ、後に小田原方の北条氏邦がこの城に入った。

豊臣秀吉の小田原攻めのときは豊臣方の前田利家上杉景勝、本田忠勝らの軍勢に攻められ3ヵ月の戦いの後に落城した。

2、金昌寺

秩父34番観音霊場めぐり」の1番は和銅温泉の近くにある四萬部寺。34番は破風山の北麓にある水潜寺で、そのすぐ近くには「満願の湯」がある。34ヵ所をめぐり終えて入る「満願の湯」はさぞかし気持ちいいことだろう。

秩父音霊場」の中でも特におすすめなのは、4番札所の金昌寺だ。仁王門の巨大ワラジが目印。国道140号の東側の県道11号からわずかに入ったところにある。

3、秩父神社

秩父の中心にある秩父神社は関東屈指の古社だ。額には「知知夫神社」と書かれている。秩父国開国の神、知知夫彦命をまつっている。秩父は武蔵の一部で今は埼玉県になっているが、もともとは「知知夫国」という独立したひとつの国だった。

そんな知知夫と胸差(むさし)の2国が合併して武蔵国になった。2国のうち知知夫国の方がより早く成立し、はるかに進んだ国だった。

4、柴原温泉

国道140号から2キロほど山中に入ったところにある温泉。3、4軒の宿があるが、そのうち「柳屋」の湯に入った。檜の湯船の露天風呂は最高によかった。

ここの名物は宿の主人自らが打つ「木の芽そば」。これを食べたくて「柳屋」にやってくる客も多いという。それと秩父名物の「猪鍋」だ。電話0494-54-0250 入浴料700円(11時30分~夕方) 宿泊費は1万円~。

(※情報は掲載当時のもの)

5、三峰神社

今では三峰神社のある山を三峰山といっているが、本来は三峰神社の遙拝所から正面に眺める三峰神社奥宮のある妙法ヶ岳(1332m)とその南につづく白岩山(1921m)、雲取山(2018m)の3山をいった。

江戸時代には三峰信仰の三峰講が各地にでき、大勢の信者を集め、山頂の宿坊はにぎわった。本殿前の青銅の鳥居や彫刻の施された木製の八棟灯籠などは江戸時代後期に奉納されたもの。

6、栃本関所跡

戦国時代に甲州の武田氏が秩父に進出したとき、この地に関所を置いたのがはじまりだ。栃本は十文字峠を越えて信州の梓山へ、雁坂峠を越えて甲州の広瀬に通じていたが、まさに「奥秩父の十字路」的な交通の要衝の地だった。江戸時代もこの地に関所が置かれた。

甲州からは三峰山に参拝する人たちが多くやってきた。信州・梓山への峠道には1里(約4キロ)ごとに観音像がまつられた。