賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

日本列島岬めぐり:第38回 都井岬(といみさき・宮崎)

(共同通信配信 1990年)

 宮崎から都井岬に至る約90キロの日南海岸は、国定公園に指定されている。国道220号と南郷町から入っていく県道はロードパークと呼ばれているが、どこから見ても、目の覚めるような海の青さだ。

 沿道にはフェニックスやリュウゼツランなどの亜熱帯樹が茂り、季節の花々が咲いている。日南海岸の尽きる都井岬の白い灯台は高さ10メートルだが、海上から灯火までは250メートルもの高さになる。

 都井岬は波の侵食に残った砂岩と頁岩が交互に層を成して重なり合っている。ここは野生馬で有名だ。元禄10年(1697年)、高鍋藩主秋月種政が軍用馬の増産のため、都井岬に御崎牧を設けたことに始まるという。

 その後、御崎牧の馬は長い年月の間に野生化し、290年の自然放牧に耐えた純度のきわめて高い日本馬として国の天然記念物に指定された。

 都井岬は日本最北の蘇鉄の自生地としても知られている。約3000本の蘇鉄も、国指定の天然記念物になっている。

 また岬には御崎神社がある。創建は和銅元年(708年)といわれ、蘇鉄の自生する断崖を背に、小さな社が建っている。

 沖縄の御嶽を思い起こさせるような風景で、きっと背後のそそり立つ岩山が御神体になっているのだろう。もともとは日本の神社は沖縄の御嶽と同じように拝殿も神殿もなく、自然自体が御神体になっていた。

「ここでは、岬そのものが神だった」

 と、そんなことを考えながら蘇鉄の覆いかぶさる参道を歩き、御崎神社に参拝した。

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都井岬の断崖を背にする御崎神社