賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

秘湯めぐりの峠越え(54)二口峠編(宮城・山形)

 (仙台→天童63キロ・取材日1996年8月19日

二口林道の二口峠

 東北道の仙台南ICで高速を降り、奥羽山脈の二口峠に向かう。

 その途中で宮城県側の温泉に入り、二口林道を走って二口峠を越え、山形県側の温泉に入って天童まで行こうと思うのだ。

 じつはこのコース、前年の夏に走った。

『バックオフ』の瀬戸さんと一緒に仙台から二口峠まで行ったのだが、山形県側が舗装工事中で通行止めになっていた。それ以来の二口林道ということになる。

 山形県側がどうなっているのか、見たかった。

 スズキDJEBEL250XCを走らせ、まずは、仙台南ICのすぐ近くにある茂庭温泉の「茂庭荘」に行く。だが、残念ながら入浴のみは不可。

 ここは公営の温泉施設。宿泊費は安いので、

「今度、このあたりに来たときはぜひとも泊まろう」

 と思った。

 こうして、ぼくの頭のなかにインプットされる温泉が、どんどんと増えていくのだ。

 R286から二口峠への道に入り、秋保温泉へ。温泉街の中心にある共同浴場の湯に入る。2、3人も入ればいっぱいになるような、かわいらしい湯船。熱めの湯。湯上がりに飲んだ冷たいリンゴジュースがうまかった。

 つづいて神ヶ根温泉と鴻巣温泉の2湯。ともに秋保川の河畔にある温泉だ。

 神ヶ根温泉は1軒宿で、昔からの湯治宿。

 鴻巣温泉には元湯と新湯の2軒の宿がある。ともに湯治宿。そのうち、元湯の湯に入った。4つの湯船があって、ひとつは冷泉。強烈に暑い日だったので、この冷泉がなんともいえずに気持ちよかった。

 大滝不動尊に参拝し、“日本の滝100選”の秋保大滝を見、茶屋の「レストイン不動」で宮城県の郷土料理うーめんを食べる。そーめん風の麺。「納涼うーめん」をスルスルッと食べた。

 そして二口峠下の二口温泉「磐司山荘」の湯に入った。

 熱めの湯。真夏の、一番、暑い時間帯に、熱い湯に入るのだ。この二口温泉は、二口林道の入口にある。こういう温泉はまさに我ら“林道派ライダー”にはぴったりだ。ここも、今度は泊まりで来よう。

 二口温泉から二口林道のダートに入り、秋保川の渓流に沿って登る。巨岩の磐司岩を見上げ、10キロのダートを走って宮城・山形県境の二口峠へ。二口林道からの眺めは抜群にいい。「絶景林道」だ。

山形側はほぼ全線舗装…

 二口峠を越えて入った山形県側は、なんと、ほぼ、全線が舗装。峠をかなり下ったところで2キロほどのダート区間があったが、全線が完璧に舗装されるのは時間の問題。山形側は宮城側に負けず劣らず眺めが良いのだが、こうして舗装路になってしまうと、その山岳風景も色あせて見えてしまう。

 二口峠を下ると、芭蕉の「奥の細道」の山寺。ここには“山寺温泉”と地図には出ている。何人かの人に聞いたのだが、よくわからない…。どうも今は、やっていないようだ。

 山寺温泉はあきらめ、JR仙山線の山寺駅で名物の“力ごんにゃく”を食べ、山寺(立石寺)の奥の院まで登る。徒歩40分。けっこうきつい登りで、ヒーヒーいってしまう。Tシャツは汗でグッショリだ。

 山寺からR13の旧道に出、山形市の漆山へ。漆山温泉に行ったが、「老人保養センター」の湯は一般客の入浴は不可。最後に、R13の旧道で天童に出、天童温泉の市営浴場に入るのだった。

■一口メモ■

 二口林道で越える二口峠は、奥羽山脈越えの歴史の古い峠。東北では旧羽州街道の金山峠やR286旧道の笹谷峠のような歴史を持っている。その二口峠を越える街道は二口街道とか最上街道と呼ばれたが、鉄道(仙山線)の開通によってすたれてしまう。

■二口峠編で立ち寄った温泉一覧■

1、茂庭温泉  茂庭荘   ---- 仙台市営で、入浴のみは不可 

2、秋保温泉  共同浴場  150円  温泉街の中心にある。6時30分~21時30分 

3、神ヶ根温泉 かんかね  500円  1軒宿。昔からの湯治宿。一見、民家風  

4、鴻巣温泉  鴻巣元湯  500円  秋保川の河畔にある湯治宿。素朴な佇まい 

5、二口温泉  磐司荘   600円   二口林道の入口にある。二口渓谷にも近い 

6、山寺温泉  ----  ---- さんざん探したが今はやっていないようだ 

7、漆山温泉  ----  ---- 「老人保養センター」の湯。一般客の入浴不可

8、天童温泉  ふれあい荘 100円  ちょっとわかりにくいが、R13近くの共同浴場