賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(33)奥尻島(北海道)

 (『ジパングツーリング』2001年12月号 所収)

 羽幌から「オロロンライン」の国道232号を南下。

 日本海を右手に見ながら走る。羽幌では一面の雲だったが、留萌を過ぎ国道231号を南下していくと、パーッと青空が広がった。

 雄冬岬近くの岩尾温泉「夕陽荘」(入浴料360円)の湯に入る。湯につかりながら、西日を浴びてキラキラ光る日本海を一望。絶景湯だ!

 湯から上がると、雄冬岬の展望台に立った。雄冬の集落と漁港を眼下に見下ろす。高台にあるこの展望台からは焼尻島、天売島からさらには利尻島まで見えるということだが、残念ながら水平線上には雲が垂れ込め、島影は見えなかった。

 展望台を降りると、国道のわきにある「雄冬岬」の碑の前でスズキSMX50を停め、海に流れ落ちる白銀の滝を眺めた。

 断崖がストンと海に落ちる雄冬岬は「西蝦夷三険岬」に数えられ、昔から船乗りたちに恐れられた難所だった。国道231号が開通したのも近年のこと。20年前の「日本一周」のときにはこの岬を通ることはできなかった。

 国道231号をさらに南下し、石狩市に入ったところで、石狩川の河口まで行ってみる。

「はまなすの丘公園」の遊歩道を歩き、日本海に落ちる夕日を眺めた。そのあとで石狩温泉「番屋の湯」(入浴料600円)に入った。

 国道231号→国道337号で札幌市の市域を走り抜け、国道5号で小樽へ。まばゆいばかりに輝く小樽の夜景が見えてくる。小樽駅に近い小樽運河を歩き、人気の「小樽運河食堂」で夕食。「池袋・大勝軒」で「中華ソバ」(700円)を食べた。

 余市のビジネスホテル「サンアート」で泊まり、翌日、国道229号で積丹半島を一周。弁慶岬、茂津多岬を通り、奥尻島への船が出る瀬棚に到着した。

 瀬棚港発14時50分の東日本海フェリー「ニューひやま」で奥尻島の奥尻港に渡った。1時間35分の船旅だ。

 すぐさま道道39号で奥尻島を一周。時計回りにまわる。

 島は海霧にすっぽり覆われていたが、海霧の切れたところでは青空が広がり、日が射していた。

 円形の穴があいている「なべつる岩」と、奥尻島のシンボルモニュメント「うにまる」を見、奥尻島南端の青苗岬に向かう。

 平成5年7月12日の北海道南西沖地震で壊滅的な被害を受けた青苗は、青苗岬近くの町。すっかり様相を一変させ、新しい家々が立ち並ぶ町並みに変わっていた。

 青苗岬の「徳洋記念緑地公園」には、大地震の慰霊碑「時空翔」ができていた。モダンなつくりの黒御影石の慰霊碑。

 岬の突端には、昭和6年につくられた石づくりの円柱の「徳洋記念碑」が立っている。 岬の高台には、赤白2色に塗り分けられた四角い灯台も立っている。

 マグニチュード7・8という巨大地震、北海道南西沖地震に直撃された青苗では最大30メートルという巨大津波に襲われ、230人もの死者、行方不明者を出した。

 神威脇温泉(入浴料420円)に入り、八十八曲峠を越え奥尻港に戻ったが、「奥尻島一周」は51キロだった。

 奥尻港から5キロほどの宮津の民宿「きくち」に泊まった。

 ここの夕食はすごかった。

 花びら状に盛ったアイナメの刺し身は見た目にもきれいなもので、フグ刺し身を思わせるものだった。さらに刺し身の盛り合わせ、カレイの唐揚げ、ウニ鍋、焼きイカ、ホヤ、カニとモズクの酢の物と、奥尻島の海の幸を存分に味わった。

「う~ん、これぞ島旅!」

 翌朝は民宿「きくち」を夜明けとともに出発し、前日、まわれなかったところを走る。 まずは宮津近くの弁天岬から奥尻島北端の稲穂岬へ。

 宮津は北海道南西沖地震で奥尻島の各地が大被害を受けたのにもかかわらず、ほとんど無傷だった。弁天岬が大津波から宮津の集落を護ってくれたのだという。岬の高台上にまつられている弁天宮を参拝した。

 フェリーの船上からも目立った稲穂岬の先端は「賽の河原園地」になっている。ここにはキャンプ場もある。岬の高台上には白黒2色に塗り分けられた灯台が立っている。稲穂岬からは、北海道最西端の尾花岬周辺の海岸線を眺めた。ここを最後に民宿「きくち」に戻り、朝食を食べ、7時20分発のフェリーで瀬棚に戻った。

 瀬棚からは国道229号を南下。右手に日本海を眺めながら気分よく走る。太櫓越を越え、大成町に入ったところで、北海道最西端の尾花崎へ。太田の集落で道は行き止まりになるが、そこからはストンと断崖が海に落ちる尾花岬を間近に見ることができる。

 国道229号に戻ると次に貝取間温泉へ。「あわび山荘」(入浴料260円)の大浴場(混浴)につかる。湯から上がると、食堂で刺し身定食(1220円)とアワビの刺し身(690円)を食べた。刺し身はエビ、イカ、サザエ、ヒラメ、それとホタテの上にウニがのっている。アワビはまだ生きている。ともに鮮度満点のうまい刺し身だ。

 そのあと平田内温泉の混浴露天風呂「熊の湯」(無料)に入った。

 ここでは、春日部ナンバーのカワサキZX-11に乗った吉田さんと一緒になった。

「カソリさん、会社を辞めて北海道に来ましたよ!」

 という弾けるような若さの吉田さんだった。

 江差を過ぎると雨になった。函館までずっと雨‥。北海道唯一の城下町、松前も、北海道最南端の白神岬も雨。函館手前の七重浜温泉「スパビーチ」(入浴料1050円)の湯に入り、体をあたため函館に到着。駅近くのビジネスホテル「シャロームイン2」(素泊まり5300円)に泊まった。

 翌朝は5時前にホテルを出、函館の朝市をプラプラ歩く。「タラバ、5000円だよ、安いよ!」などと盛んに声をかけられる。

 朝市内の食堂「味の一番」で三平汁定食(840円)を食べる。汁の中のシャケのアラをしゃぶった。これぞまさに北海道の味!

 ホテルに戻り、7時30分、函館を出発。海沿いの国道278号をいく。本州に最も近い汐首岬を通り、恵山岬へ。恵山町側の御崎海浜温泉の混浴露天風呂「浜の湯」と椴法華村側の水無海浜温泉の2湯の無料湯に入った。

 12時、森に到着。函館本線の森駅で名物駅弁「いかめし」(470円)を食べた。

 森から国道5号で長万部へ。

 長万部からは国道37号を行く。国道沿いの「大岸ドライブイン」で「ジンギスカン定食」(1000円)を食べた。

 室蘭の地球岬に立ち、国道36号で苫小牧へ。虎杖浜温泉(入浴料600円)に入る。

 これが北海道最後の温泉。湯から上がると、国道の反対側の食堂「あけぼの」で「札幌味噌ラーメン」(700円)を食べた。これが北海道最後の食事。苫小牧到着は22時。フェリー埠頭に行き、23時45分発の商船三井フェリー「さんふらわあみと」に乗った。「北海道一周」が終わった…。