賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの島旅(31)焼尻島(北海道)

 (『ジパングツーリング』2001年12月号 所収)

 

 礼文島、利尻島と北の2つの島をめぐって稚内港に戻ってきた。なつかしの稚内港‥。ここから2度、サハリンに渡った。最初は1991年。ドーム前の岸壁からロシア船「ユーリー・トリフォーノフ号」にバイクともども乗り込み、サハリン西海岸のホルムスク港に渡った。

 2度目は2000年。フェリー埠頭から東日本海フェリーの「アインス宗谷」でやはりバイクともどもサハリン南海岸のコルサコフ港に渡った。

 離れがたい稚内港‥。

 意を決してスズキSMX50のエンジンをかけ、ひと吹かししたところで思い出の稚内を出発するのだった。

「また、来るゾ、稚内よ!」

 稚内からは日本海に沿って南下していく。

 まずは野寒布岬に立つ。赤白2色に塗り分けられたノッポ灯台。岬の突端からは、つい今しがた別れを告げたばかりの利尻島を見る。

 次に本土最北の温泉、稚内温泉「童夢」(入浴料600円)の湯につかる。大浴場からもやはり利尻島が見えた。

 道道106号で日本海を右手に見ながら走る。海岸にはエゾカンゾウが群生し、黄色い花を咲かせている。快晴の夕空。透き通るように青い空。海も青い。利尻島がよく見える。最高峰の利尻富士に登ったあとだけに、こうして本土側から眺める利尻島が、何か、無性にいとおしくてならなかった。

 稚咲内の漁港で日本海に落ちていく夕日を眺める。

 利尻島が赤紫色に染まっている。夕日はその右側、礼文島に落ちていった。夕日が落ちる瞬間、礼文島もはっきりと見えた。 

 道北の大河、天塩川を渡り、天塩のビジネスホテル、「サンホテル」に泊まる。すぐ近くの天塩温泉「夕映」(入浴料500円)の湯に入った。

 翌日、国道232号で羽幌へ。羽幌港から焼尻島、天売島の2島に渡った。

 羽幌港発8時30分の羽幌沿海フェリー「おろろん2」に乗った。

 海は荒れ、うねりが高く、「おろろん2」は大揺れに揺れた。そのため船酔いの人たちが続出した。

 9時25分、焼尻島港に到着。さっそく道道255号で時計回りで島を一周する。島のあちこちにエゾカンゾウの黄色い花が咲いている。島全体が平坦で、広々とした麺羊牧場の風景は、日本離れしたもの。牧場内のダートも走った。焼尻島一周は約10キロ。第1周目を終え、焼尻港に戻った。

 つづいて第2周目に出発。その途中では、島中央部の「オンコ林」に行った。駐車場にバイクを停め、樹林の中の遊歩道を歩く。この遊歩道歩きが気持ちいい。オンコというのはイチイの木のことで、焼尻島のオンコは強風と積雪のせいなのだろう、上に伸びずに横に枝を広げている。木の高さは1メートルほどでしかないのに、10メートル以上も木の枝を広げている。焼尻島の中央部は豊かな自然林になっているが、その目玉がオンコ林なのだ。

 最後に、旧小納家の「焼尻郷土館」(入館料300円)を見学。小納家は石川県の旧塩屋村の出身で、日本海を通しての焼尻島と北陸とのつながりを知った。