秘湯めぐりの峠越え(52)土湯峠編(福島)
(郡山→福島185キロ・取材日1996年4月18日~19日)
渓流上の温泉宿
昭文社の桑原和浩さんと一緒に東北に行った。目的地は福島だ。
カソリがスズキDJEBEL250XCで、桑原さんはBMWのGS-1100。外環道から東北道に入り、一気に郡山南ICまで走った。
我々の1晩の宿は、奥羽山脈山麓の源田温泉「熊田屋旅館」。ここは“林道派”ライダーにはぴったりの温泉宿。日山源田林道の入口にある温泉宿なのだ。
それだけではない。なんと、渓流上の温泉宿なのだ。
いままで渓流沿いの温泉宿には、それこそ数えきれないほど泊まっているが、渓流上の温泉宿は初めての経験。部屋の真下をサラサラ音をたてて渓流が流れているのだ。
ぼくたちのほかには泊まり客もなく、石づくりの湯船にゆったりとつかり、大広間での夕食になる。イワナの塩焼き、コイのアライ、フキノトウやワサビの葉などのてんぷら、ワラビのおひたし、コイコクと、山里の味覚をたぷりと味わった。
夕食後、今度は部屋で渓流の音を聞きながら、『ツーリングマップ』を肴にしてビールをグイグイと飲み干した。
昭文社の『ツーリングマップ』は大幅に改定されることになり、ぼくが東北版を担当することになった。その打合せをも兼ねて桑原さんと東北の温泉宿にやってきたのだ。
翌朝は、朝食のあと、日山源田林道を走る。宿の前が林道入口なのだ。見晴らしのよい林道。気分よく走れる。
ところが、峠に近づくにつれ、あっというまに積雪量が多くなり、ついに通行不能‥‥。残念ながら、峠近くの地点で引き返した。
この日山源田林道はダート11キロ。林道入口から出口まで、きちっとダートなのがうれしい。高旗山北側の峠を越えるが、この高旗山は、“福島のヘソ”になっている。
土湯峠周辺の温泉めぐり
R49で中山峠を越え、猪苗代湖畔へ。ここで昼食。湖畔のレストラン「会津藩」で名物の「磐梯噴火ラーメン」を食べる。激辛肉ラーメンでまっ赤な色の汁。ヒーヒーいいながら喜多方ラーメン風の麺を食べたが、ぼくはこういうのって、好きなのだ。
R49からR115に入り、土湯峠へ。全長3360メートルのトンネルを抜け出たところで、旧道で土湯峠に向かって行く。土湯峠の周辺は日本でも有数の温泉の宝庫なのだ。 まず最初に、野地温泉「野地温泉ホテル」の露天風呂に入る。いかにも温泉といった感じの白濁色の湯で硫黄の匂いがプーンと鼻をつく。
つづいて新野地温泉、鷲倉温泉と温泉のハシゴをしたが、これら3湯はともに1軒宿の温泉で、どこも、湯量が豊富だ。新野地温泉と鷲倉温泉の間を下っていく赤湯温泉と、土湯峠の手前を入っていく幕川温泉はまだ、冬期休業中だった。
標高1224メートルの土湯峠に立つ。強烈な風の冷たさ。峠周辺には雪の壁ができていて、冬景色と変わらない。この時期、峠の上と下とでは、まったく季節が違う。
磐梯吾妻スカイラインがオープンしたので、峠のドライブインも営業を始めていた。
土湯峠を下り、R115に戻る。峠道を下るにつれて、雪は消える。土湯温泉まで下ると、やっと春らしくなった。峠の上と下とでは気温は10度以上は違う。共同浴場の湯に入り、東北道の福島西ICに出た。
■一口メモ■
土湯峠は中通りと会津の境。このあたりは日本でも有数の温泉の宝庫。今回、立ち寄った温泉のほかにも、会津側の峠下には横向温泉、中ノ沢温泉、沼尻温泉がある。中通り側の土湯温泉の奥には東海温泉、川上温泉、不動湯温泉がある。それら3湯は1軒宿の温泉。とくにダートを走り、最後は急坂を下る不動湯温泉はきわめつけの秘湯だ。
■土湯峠編で立ち寄った温泉一覧■
1、源田温泉 熊田屋旅館 500円 日山源田林道の入口にある渓流上の温泉宿
2、休石温泉 静山荘 400円 三森峠下の静かな温泉。源義家伝説の地
3、磐梯熱海温泉 宝の湯 300円 R49沿いの共同浴場。駅前には元湯浴場
4、野地温泉 野地温泉 500円 露天風呂が最高にいい。内湯に金精さま
5、新野地温泉 相模屋旅館 500円 乳白色の湯。湯量豊富。ガラス張り内湯
6、赤湯温泉 好山荘 ---- 冬期休業中。5月上旬にオープン
7、鷲倉温泉 高原旅館 500円 土湯峠にもっとも近い温泉。湯量豊富
8、幕川温泉 ---- ---- 冬期休業中。5月上旬にオープン
9、土湯温泉 中ノ湯 100円 温泉街の中心にある共同浴場。超熱めの湯